光と影を分けた「対照的な幼馴染」とその家族
榎本睦(えもと むつみ) / ムウちゃん
みいちゃんとは保育園時代からの幼馴染であり、一緒に上京した同郷の友人。愛称は「ムウちゃん」。幼少期から変わらないお団子ヘアとツリ目、八重歯が特徴的な、実年齢より幼い雰囲気を持つ。みいちゃんと同様に猫口で描かれている。素直で明るい性格だが、初対面の山田さんが違和感を覚えるほど、服装や言動がどこかチグハグな印象を与える。実際には会話のキャッチボールが成立しづらく、姿勢が保てない、視線や表情が不自然、文字が真っ直ぐ書けないといった特性を抱えている。
東京では夜の世界に身を投じた時期もあり、トラブルを繰り返して2年前に警察の厄介になるという挫折を経験している。しかし、この施設入所時の面談がきっかけで初めて知的障害と診断され、社会復帰後は療育手帳を取得して適切な福祉の支援へと繋がった。手先の細かい単純作業が得意であり、作業所でホチキス針の箱詰め業務に従事。自分に合った仕事で職員から褒められる日々に、ささやかな喜びを感じて生きていた。
出所後、みいちゃんから路上での違法な客待ち行為に誘われるが、「もうあんな仕事はしないと約束したから」と明確に拒絶。同時に「みいちゃんも何か障害がありそう」と福祉事務所へ行くことを勧めるが、そのストレートな言葉がみいちゃんの高いプライドを刺激し、拒絶されてしまう。2012年の秋頃には宮城の実家へ帰郷。障害者雇用に理解のある隣町の農家で働き始め、同じ境遇の人々を仕事先として紹介するなど、周囲と明るくコミュニケーションを取りながら生活している。素直に教えを吸収する性格から、地元では「愛される障がい者」としてすっかり馴染み、農家のPRポスターに起用されるほど順調な歩みを見せている。
家庭環境に恵まれて育ったためか、他者の悪意に極めて鈍感。自分を非行の道へ引きずり込んだみいちゃんの「有害性」に全く気付いておらず、帰郷後も恨むどころか親しみを寄せ続けているという、ある意味で危うい純粋さを持っている。

