サッカーのワールドカップ(W杯)第23日は3日(日本時間4日)、ダラス競技場などで決勝トーナメント1回戦が行われ、オーストラリアがエジプトに1―1からのPK戦(2―4)で屈した。サポーターの悲鳴が響く中、これで今大会に参戦したアジア(AFC)勢は全チームが姿を消すこととなった。
今大会から出場枠が従来の32から48へと大幅に拡大され、アジア枠は「8.5」へと倍増。大陸間プレーオフを勝ち抜いたイラクを含め、過去最多となる9チームが本大会のピッチに立った。
しかし、蓋を開けてみれば世界との壁は厚かった。日本とオーストラリアの2カ国こそ意地を見せて1次リーグを突破したものの、韓国やイラン、サウジアラビアなど残る7チームは1次リーグで敗退。そして期待がかかった決勝トーナメントでも、初戦(ベスト32)で日本に続きオーストラリアも敗れ、実質的な「16強」へ進出したアジアのチームはゼロという、あまりにも寂しい結末を迎えた。
同じく枠が「1.5」に増えたオセアニア(OFC)からも、唯一出場のニュージーランドが1次リーグで姿を消しており、アジア・オセアニア勢が早い段階でトーナメントから完全駆逐されたのは紛れもない事実だ。
アジア(AFC)勢が決勝トーナメント1回戦で全滅したことを受け、欧州や南米メディアからは「8.5枠は過剰だ」との批判が飛び交っている。しかし、結論から言えば、次回以降の大会でアジア枠が大幅に削られる可能性は極めて低い。そこには、純粋な「競技レベル」だけでは語れない、FIFAの強固な思惑と他大陸が抱える事情がある。
ハイセンスにアラムコ…ピッチ看板が示す「アジア市場」の絶対的価値
今大会の試合中継を観ていれば、ピッチ脇を流れるLED看板のラインナップに気づくはずだ。ハイセンス(海信)や蒙牛乳業といった中国の巨大企業、そしてカタール航空やサウジアラビアの国営石油会社アラムコなど、中東のオイルマネーがFIFAの財政基盤を強固に支えている。 FIFAにとって、巨大な人口と資金力を誇る中国、インド、中東諸国がW杯本大会の舞台に立つことは、放映権料とスポンサー収入を維持・拡大するための“至上命題”だ。競技面での結果が伴わずとも、ビジネスの観点から「一度広げたアジアの門戸を閉ざす」という選択肢は、FIFAの首脳陣にはないだろう。
欧州と南米が抱える「これ以上枠を増やせない」事情
現在16枠を持つ欧州だが、これ以上出場国を増やせば、本大会の1次リーグ(4カ国×12組)において「ほぼすべてのグループに欧州勢が2チーム同居する」という事態を招く。これは「多様な大陸のチームが交わる」というW杯の醍醐味を大きく損なうものだ。
一方の南米も、加盟国わずか10カ国による総当たりの予選を行っている現状で、すでに「6.5枠」が与えられている。これ以上枠を増やせば予選の緊張感が完全に失われてしまう。極論、地理的に南米大陸にあるスリナムなどがそうしているように、本大会出場経験のないベネズエラが北中米カリブ海(CONCACAF)へ転籍でもすれば南米枠を減らす(維持する)口実にはなるかもしれない。だが、ベネズエラにとって強豪ひしめく南米に留まり、ブラジルやアルゼンチンと真剣勝負を繰り広げる意義と誇りは大きく、自ら激戦区を去るという選択は非現実的だ。物理的にも政治的にも、南米枠をいじる余地はすでに残されていないのである。
