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【ひと駅の旅】西武新宿線『新井薬師前』から『沼袋駅』へ / 変わりつつある駅の「昭和の面影」を探して

【ひと駅の旅】西武新宿線『新井薬師前』から『沼袋駅』へ / 変わりつつある駅の「昭和の面影」を探して

・古い地図、航空写真から見えたもの

それで今回、どうして新井薬師前駅から始めようと思ったのか? それにはいくつか理由がある。まずひとつが今の駅の姿はいずれ見られなくなるからだ。西武新宿線では現在(2026年3月)、中井~野方駅間の地下化(連続立体交差事業)の工事が進んでいる。2033年度末の完成をめどに約2.4kmの区間、7カ所の踏切を除却する予定だ。

https://rocketnews24.com/wp-content/uploads/sites/2/2026/03/新井薬師前駅(電車通過).mp3

合わせて駅舎の建て替え工事も行われている。記録に残すには少々出遅れたかもしれないが、今のうちに見られる景色を見ておきたいと思い、新井薬師前駅へ行くことにした。

訪ねるに当たって私は事前に周辺地域の古い航空写真を確認した。参照したのは「沼津工業高等専門学校」が公開している「ウェブで過去の地形図や空中写真を見る」である。

https://rocketnews24.com/wp-content/uploads/sites/2/2026/03/新井薬師前駅から沼袋駅.mp3

新井薬師前駅は1927年に開業しており、1950年頃の旧版地図を見ると西武線は「西部農業鐡道」と記されている。当時東京都の委託で糞尿輸送を行っていたことから、「肥やし列車」とも呼ばれていたそうだ。

もうひとつ歴史をひも解いて気づいたことがある。それは1947年の航空写真を見ると、梅照院(新井薬師)の位置を確認すると、その場所に建物が見当たらないのだ。調べたところ、「山の手大空襲」(1945年5月2)で焼失し、現在の建物は戦後に建てられたものだとわかった。

それから「中野平和の森公園」が刑務所の跡地に作られたことも、地図を見て初めて気づいた。この街にそんな歴史があったとは、10年以上暮らしているのに、まったく知らなかったのだ。

https://rocketnews24.com/wp-content/uploads/sites/2/2026/03/沼袋駅前.mp3

・沼袋駅

新井薬師前駅から乗車して沼袋駅に到着、時間にして約1分30秒。この区間、約1.3kmもすべて地下に潜るとなると、車窓から見える景色ももう見られなくなるな。

駅を出るとすぐ踏み切り、たしかにこの沿線は踏み切りが多い。朝夕のラッシュ時には間違いなく渋滞しているはず。それらが解消されることを思えば、地下化の工事には大きな意義がある。

駅周辺が大幅に生まれ変わるとなると、この昭和な地図看板もなくなっちゃうな。

味のある手書きの地図。理容室と思われる「ヤング」という店名も、昭和だなあ。

北側を少し歩くと、こんなところに銭湯!? 駅近にもほどがある! 時間が許せば「一の湯」に入って行きたかったんだけど、今、猛烈にお腹が空いてしまって、風呂に入るゆとりはないなあ。

その先を少し行くと小さな飲み屋街、この辺は意外と飲み屋さんが多いんだね。どこも味のあるお店だ。

さらに北に向かって歩いていると、突然大きな鳥居出現。「大岡稲荷大明神」? これは、さぞ大きな神社があるに違いない。

……と思ったら、すごく小さな社があった。ご祭神は「宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)」なのだとか。鳥居ににつかわしくない社のサイズにびっくりしてしまった。もちろんちゃんとお参りさせて頂きましたよ。

それにしても~……、腹が減った~……。どこかにフラリと入りたいのだけど、手頃なお店が見つからずに右往左往……。

GoogleMapsで見つけた「まんぞくキッチン」というところに行こうとしたらお休み。ついでにお隣の「リジャウル」ってところも休みでした。まんぞくキッチンで満足したかったのに。

比較的昭和の色の濃い北側周辺にも工事は迫っている。この衝立がなかった頃は、もっと風情のある景色だったのだろう。

腹ぺこで歩いていたら「中華料理」の暖簾が目に入った。もうここに入るしかない! 何でもいいから食事をしたい!

すがるように「大陸」に入店。するとお店にはご主人と常連と思われる年配の男性が1人。2人はテレビで「春の選抜(第98回選抜高等学校野球大会)」を見ていた。ちょうど対戦は佳境を迎えていた。

1回戦「大垣日大」(岐阜)対「近江」(滋賀)。9回を終えて0対0のまま延長10回タイブレークに突入していた。私もその空気に習って、試合を見つつタンメン(税込700円)と餃子(税込400円)を注文。オーダーが出てくるまでの間に大垣が2点を先制し、勝利に王手をかけた。

両校の投手はともに投球数100球を越えており、疲れがピークを迎えている様子。どっちが勝てというわけでもないけど、どっちにもがんばって欲しい。そんな気持ちで1球投げる度に、私も常連さんもご主人も「おお~!」と声を上げていた。

そしてタンメンをすすりつつ試合の行方を見守り、近江が1点を返したものの、そのままゲームセット。大垣日大が勝利した。

餃子を頬張ってはテレビを見て、また1個食べてテレビ。その繰り返しをしながら、まるで自分も常連であるかのように、その空気を楽しんだ。料理もさることながら、居心地の良さが何よりのご馳走。愉快な昼食をとれて大満足である。

再び駅の方に戻って、先ほどチェックしていた喫茶店「炭火珈琲 猫丸」へ。きっと良い店に違いないと踏んでいたので、迷わず階段を上がった。

お店はいわゆるレトロな喫茶店で店内にはジャズが流れており、上品なマスターが温かく迎えてくれた。もうそれだけで私は癒されている。事前の見立ては間違いではなかった。カウンターに座って、苦味ブレンド(税込480円)を注文。

あとは静かにコーヒーをすすりつつ、ジャズに耳を傾ける。普段ならすぐにスマホをいじって、見るともなくSNSなんか見てしまうけど、そもそも何かを知りたくて見ているわけじゃない。無意識でどうでもいいことに時間を割いてしまう。それがバカバカしく思えたので、今はただコーヒーと音楽に集中する。

時間にして15分もなかったかもしれない。それでも手癖を遮断したら、なんだか心が静かになった。きっとこのお店の居心地が良いから、そんな風に時間を使いたいと思ったのだろう。心を鎮めたいときに来たいお店だ。

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