4月10日のフォントの日には、Adobe Fontsに多くのフォントが追加された( https://blog.adobe.com/jp/publish/2026/04/10/cc-design-adobefonts-2604 )中でも注目は、アドビから開発が発表された『ネオクロ』だ。このフォント、これまでにアドビのフォントになかった極太フォントで、しかも仮名だけ縦横比を変えられるバリアブルフォントという特殊な設計になっている。また、アドビの日本語フォントデザイナーとしては第3世代となる吉田大成さんが作ったフォントという意味も興味深い。
フォントは縁の下の力持ち!
フォントというのは、多くの人はあまり気にしていないけど、我々の生活を支えるインフラのような存在だ。
たとえば、明朝か、ゴシックか、それとももっと特殊なフォントかによって、文章の印象は大きく変わる。そればかりか、ちょっとフォントが変わるだけで、文章が恐ろしく読みにくくなったりする。また、製品の取扱説明書に日本のものでないフォントが入ってるだけで、「あれ? これは日本製じゃないな」と気付いたりするほど、文化に深く根ざした存在だ。

筆者もデザイナーではないからさほど詳しいワケではないが、30年以上前から出版社にいて、写植の時代、DTP黎明期(デザインソフトはPageMaker 6だった!)、そしてQuarkXPress、InDesignによる日本語の組版が大きく改善されてきた時代を見てきたので、そのありがたみや価値は分かる。
手書き以外のあらゆる文字、ディスプレイに表示されるものにも、印刷されるものにも、フォントが使われているから、我々は日々フォントデザインの影響を受けている。
意外や少ないアドビのフォントデザイナー
英文字は26文字、大文字と小文字や記号を合わせても、それほど多くの文字をデザインしなくてもすむが、日本語だと常用漢字だけで約2100文字、実用的なフォントとして提供するには約7000文字、そして商業ベースで提供するには約2万文字のデザインが必要になる(拡張するともっと増える)。フォントをひとつ開発するというのは、とてつもない手間とコストがかかる作業なのだ。
では、たくさんの方がフォントデザインに関わっているかというとそうではない。アドビの日本語版フォントに関わっている人は、デザイナー2人、エンジニア2人のわずか4人。歴代においてもそう多くはなく、ほんの数人の方が連綿と作業されているのだ。

最初に日本のアドビでフォントデザインを始めた方は小塚昌彦さん。元毎日新聞の方だそうで、1992年に入社し、小塚明朝や、小塚ゴシックを作った人だ。
小塚さんからバトンを受け取ったのは西塚涼子さん。西塚さんは、何度か取材させていただいたことがあるが、フォントに対する情熱がすごい、エキセントリックで楽しい方だ。

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しかし、背後で大勢の方がデザインされているのかと思ったら、なんと現在デザイナーは、西塚さんと2018年入社の吉田大成さんのおふたり。それぞれ担当しているフォントが違うが、どちらかがリードして協力し合ってデザインしているのだそうだ。我々がデジタルの世界で使っているフォントが、そんな一子相伝……というと大げさかもしれないが、本当に少人数の職人的世界で作られているとは知らなかった。
吉田さんは小学生の時に美術の授業でレタリングを習ったのがきっかけて、フォントデザインに興味を持ったという。ノートの表紙に「国語」「算数」などと書く字体に凝ったりしたのだそうだ。絵が好きで美術を志していたが、予備校時代に予備校講師の方がタイプデザイナーで、その話を聞いたところから、将来タイプデザイナーになりたい……と思うようになったのだという。
武蔵野美術大学に入り、その後新卒で2018年にアドビに入社。アドビのような会社は常時新卒を採っているわけではないから、これはとてもレアケースだ。その後アドビでフォントデザイナーとして勤務しているが、一方、個人的に『Glyphsではじめるフォント制作』(BNN)、『パスクール—パスで描く文字デザインの学校—』(PIE International)などの書籍を上梓したり、『墨とPath』というPodcastを行ったりしている。活動的なのである。
