・2枚のCD-R
1番弾き語りをしている時期に、誰に聞かれることもない曲をいろいろ作った。今でも思い出せるもののいくつかあるけど、とっくに忘れてコードはおろか歌詞さえも浮かばなくなったものもある。幸いなのは、少しだけど記録が残っていること。弾き語り仲間でよくつるんでいた先輩は、人の曲を録りたがる人だったな。
私も私で機材がある分、レコーディングの理屈はわかっている。だが、彼はそれ以上に宅録に凝っていて、わざわざDAT(デジタル音声テープ)で録音していた。それをCD-Rに焼いてくれてたんだよな。あのDATがまだ残っているとしたら、CD-Rでもらった以外にも、私の曲は残っているはずなんだが。
それでも手元に2枚あるだけでも十分有難い。あの頃、今では考えられないほどの手間と時間をかけて、夜な夜な録音したものだ。ピンポン録音の面倒くさかったことと言ったら……。
・SUNOであの曲がよみがえった
前置きがずいぶん長くなってしまった。きっと私と同世代の人で、同じように音楽を楽しんできた人たちがいるはず。そう思って、ここまでの内容をお伝えさせて頂いた。なぜ、同世代の人たちを意識したかというと、まだ楽曲生成AIを使っていない人たちに気づいてほしいからだ。昔の音源をよみがえらせることができると。
私が使った楽曲制作AIは冒頭に挙げた「SUNO」だ。
2023年末ごろから広く知られるようになり、翌24年にかけて爆発的に進化したサービスである。他のAIと同じようにプロンプトを入力するだけで、作詞・作曲・編曲、さらには歌唱までをまるごと1曲分作り上げてしまう優れものである。
私も「スゴイ」とは聞いていたがとくに理由もなく使わずにいた。数日前に試しに昔の音源のデータをサービスに放り込んでみたのだ(使い方は本稿では割愛させて頂く。詳しくはYouTube等で紹介している動画を参考にして頂きたい)。
最初に投げ込んでみたのは、私が初めて作った『ミゼット』という曲だ。なぜかこれはカントリーソングだ。ミゼットとは1950~70年代に製造販売されていたダイハツの軽規格の3輪自動車である。
録音した1990年代にはすでに見かけることはなかったが、幼少期にギリギリ見たことがある車だった。4つくらいしかコードを使わないのどかなこの曲を、SUNOに投げ込んでアレンジさせてみたところ、イメージ通りのフォークソングに仕上がった。
最初に聞いた瞬間に私は猛烈に感動してしまって、ちょっと涙が出そうになった。
自分が未熟でちゃんと完成に導くことができず、そのまま記憶の片隅に置き去りにした曲が、AIの力で華々しくよみがえったのだ。それはまるで、ちゃんと世話をしてあげられずに枯らしてしまった植物が、生き返って大輪の花を咲かせてくれているみたいだ。
本来はこうなるはずだったんだな。自作の曲を放り出してしまった、自らの不甲斐なさに悲しくなると同時に、AIの技術に感謝の念が湧く。迷わずすぐに課金して、PROプランに加入した。それからいくつかの曲をさらに放り込み、さらには近年作りかかったループ音源とか、途中で挫折した未完の曲など次々に放り込んだ。
もうこうなったら止まらない。完全に眠っていた、音楽を作りたい欲求が目覚めた。まさしく睡眠時間を少し削って没頭。……とはいえ、徹夜するほどもう若くないので、ちゃんと寝たけど。
