最新エンタメ情報が満載! Merkystyle マーキースタイル
脳トレ四択クイズ | Merkystyle
ロヒンギャ虐殺6000人…“世界最悪の迫害”を描いた映画『LOST LAND/ロストランド』が突きつける沈黙の罪

ロヒンギャ虐殺6000人…“世界最悪の迫害”を描いた映画『LOST LAND/ロストランド』が突きつける沈黙の罪

ロヒンギャの人々を使ってロヒンギャの映画を撮った意味

––––最後の問いです。藤元監督は過去の「僕の帰る場所」「海辺の彼女たち」も含めてシャープな画づくりで社会問題のリアルを描き出しています。

今回の「ロストランド」でも感じたことですが、迫害の構造については敢えて触れられていない。ロヒンギャという固有名詞は出てきますが、それがいったいどういう背景のどの国の民族なのか。また彼らの家が燃やされているシーンがありましたが、誰が攻撃してきたのか。加害者であるミャンマー国軍という固有名詞が出てこない。

さらに言えば、日本人監督としてこのロヒンギャの虐殺に加担してきた日本政府の責任についての言及。日本はクーデター後もミャンマーの軍人を留学させて教育訓練させていた。「国軍は日本によって作られたと言っても過言ではない」とミャンマー軍の中将自身が語っています。

そして駐ミャンマー丸山市郎日本大使(当時)はかつてBBCに出演して「ロヒンギャの迫害にミャンマー国軍は関与していない」「ロヒンギャは(違法移民を意味する)ベンガル人」という度し難いヘイトスピーチを発信して、外国人記者が呆れるほどのゴマを国軍にすってきた。

欧米諸国がロヒンギャ迫害に制裁を科す中で日本政府は「独自外交」の名の下にこれを看過し、結局クーデターを起こされて大恥をかいた。

しかし丸山は退官後もこのロヒンギャヘイトを撤回していない。もちろん映画は社会問題の啓蒙の装置ではないです。ただ、主人公の二人をあんなに苦しめている背景には、未だにミャンマークーデター政権と親和性を持ち続けている日本の責任が大きくあることをこの問題を追ってきた者として、もちろん映画の中ではなくともどこかで伝えてもらいたいという思いが私にはあります。

「そうですね。映画的なことで言えば、やはり主人公の姉弟、あの子たちの知識量、記憶以上のことを語ってしまうと、僕が彼らに言わせる構図になってしまうのでそれはしたくなかったのです。なるべく映画館に来た人が彼ら子供と同じような知識で見てもらいたいというのが、まず演出上ありました。

ただ何か芸術的に作った映画の1 本だけじゃなくて、やはり世の中にある様々なものと連帯はしたいとは考えています。木村さんも含めて多くのジャーナリストとも連動していきたいですし、ロヒンギャ問題にタッチしてる方は存じていますので、そこのハブになって広げていきたいという気持ちは強いです。そっちは記者さんたちに任せましたではなくて、一緒に進めていきたいという思いです」

日本人監督がロヒンギャについての映画をロヒンギャの人々を使って撮ったのだ。考えてみればそれがすでに答えである。在日のロヒンギャの人々は本作の存在に感謝し、上映に全面的な協力を捧げている。一人でも多くの人に観てもらいたい作品である。 

文/木村元彦

提供元

プロフィール画像

集英社オンライン

雑誌、漫画、書籍など数多くのエンタテインメントを生み出してきた集英社が、これまでに培った知的・人的アセットをフル活用して送るウェブニュースメディア。暮らしや心を豊かにする読みものや知的探求心に応えるアカデミックなコラムから、集英社の大ヒット作の舞台裏や最新ニュースなど、バラエティ豊かな記事を配信。

あなたにおすすめ