教育行政のトップとして倫理を語る「不倫」大臣
強いリーダー像への共鳴、分かりやすい物語の選択、空気を作る政治。その縮図である。その後の発信にも違和感は残る。トランプ大統領の襲撃未遂には即座に「暴力は許されない」とコメントした。姿勢としては当然だ。問題は、その範囲である。
米国とイスラエルによるイラン攻撃。その緊張の中で、ハメネイ師を巡る状況を含め、多くの民間人の命が失われたとされる局面について、明確な見解は示されていない。個別の暴力には即応する。国家規模の暴力には沈黙する。ここに優先順位が表れる。倫理ではない。“選択された沈黙”である。
その構造は安全保障政策にも表れている。武器輸出の実質的解禁。国家の根幹に関わる決定が、限られた一部の者だけで決められ、国会での議論もなく事後報告で済まされる。
スピードか、効率か。それとも統治の劣化か。市場であればガバナンスの毀損である。短期的には回る。だが長期的には信認を失う。国家も同じだ。
松本文科大臣の不倫問題も同根である。問われているのは不祥事そのものではない。議員会館という公的空間で起きたと報道がなされた。公の場が私的に使われる。ここに公と私の境界の崩壊がある。
その人物が教育行政のトップとして倫理を語る。この時点で言葉と現実は乖離している。そして、それを是正しない政権の判断が価値観を示す。子どもは見ている。言葉ではなく行動を見ている。
通貨の劣化を株高で覆い隠す構造
地方選も同じ構造だ。支持率は高い。だが自民推薦候補は負ける。支持率は温度であり、選挙は重さである。温度が高くても票にはならない。
有権者は分かっている。国政では物語に乗る。地方では現実を見る。これは反発ではない。分散である。
石油も同じだ。供給不安の中で節約や自粛を求める。大丈夫なら自粛はいらない。自粛が必要なら大丈夫ではない。負担は国民に回る。「節約してください」「相談してください」。責任の外注である。
すべては一本につながる。株価は上がる。だが円は弱い。支持率は高い。だが地方では負ける。制度は整う。だが信頼が伴わない。
このズレの正体は、信頼の劣化である。ハリボテは遠くから見れば立派に見える。近づけば薄さが分かる。熱狂は終わる。そのあとに残るのは現実だけだ。
いま起きているのは株高ではない。通貨の劣化を株高で覆い隠す構造である。その構造を支えているのが、にわか的な熱狂である。だが、通貨の力を失った国で、資産価格だけが上がり続けることはない。どこかで、必ず帳尻は合う。

