それでも、科学者たちは「手を出すな」と言う

犯人もわかりました。
動機についても、有力な仮説は見えてきました。
それでも、外部の専門家たちは、人間が安易に介入することに慎重な姿勢を示しています。
本研究には参加していないハノーバー獣医科大学の野生動物専門家、ウルスラ・ジーベルトさんはこう語っています。
「それがどれほど自然なことなのか、まだわからない」
人間が「残酷だから」「かわいそうだから」と手を出した結果、もっと大きなバランスを壊してしまう——そういう失敗は、自然保護の歴史の中で何度も繰り返されてきました。
ラングレーさんは、こう締めくくっています。
「見ていて辛いのは確かです。でもアザラシの生活は——いや、実際にはどんな野生動物の生活も——厳しいものなのです」
私たちはつい、自然を「美しいもの」として見たがります。
でもその美しさの裏側には、こちらの想像をはるかに超えた、容赦のなさがあります。
今回の研究が明らかにしたのは、ある意味でとてもシンプルな事実です。
40年間「誰かのせい」にされてきた犯行は、最初からすぐ隣にいた者の仕業だった——少なくとも、その可能性がようやく見えてきたのです。
答えはいつも、思ったよりも近くにあるものなのかもしれません。
元論文
Gray Seal Cannibalism at the Largest Colony in the World, Sable Island
https://doi.org/10.1111/mms.70138
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部

