最新エンタメ情報が満載! Merkystyle マーキースタイル
脳トレ四択クイズ | Merkystyle
鳥の網膜は「酸素ゼロ」で動いていた——血管すら排除して何を目指したのか?

鳥の網膜は「酸素ゼロ」で動いていた——血管すら排除して何を目指したのか?

人間の医療のヒントになるかもしれない

Credit:Canva

最後に、この発見が私たち人間にどう関わってくるかの話です。

人間の脳は、酸素がなくなるとせいぜい1分しか持ちません。

脳の血流が止まる脳卒中が、ひと度起これば命に関わる深刻な病気である理由は、まさにここにあります。

そんな私たちから見て、鳥の網膜は驚くべき存在です。

人間の脳が1分で機能を失う状況を、生涯ずっと、正常な状態で乗り越えているのです。

「酸素がない状態でも組織が壊れない方法」を、自然はすでに何百万年もかけて発明していたわけです。

ニエンガード博士はこう語ります。

「自然は、人間を病気にさせる『鳥類の生理学的問題』を、すでに解決してくれていたのです。この進化的な解決策を理解することで、酸素欠乏のもとで組織が機能不全に陥る理由や、そうした病気の治療法について、新たな考え方が生まれることを期待しています」

ただし、いますぐ脳卒中の薬ができる、という話ではありません。

基礎研究から実際の治療応用まで、おそらく数十年単位の道のりが必要でしょう。

それでも、自然界には私たちがまだ気づいていない「解答例」がたくさん眠っていることを、この研究は教えてくれます。

常識として「神経組織は酸素なしでは死ぬ」と思い込んでいたところに、進化はとっくにその常識を破る答えを用意していたわけです。

ダムスガード博士は最後にこう語っています。

「私たちにはできないことを成し遂げているこれらの動物たちから、学ぶべきことはたくさんあります」

夜空を渡っていく渡り鳥たちの目のなかでは、今この瞬間も、恐竜の時代から受け継がれてきた仕組みが、静かに動き続けているのかもしれません。

参考文献

Bird retinas function without oxygen – solving a centuries-old biological mystery
https://www.eurekalert.org/news-releases/1113036

元論文

Oxygen-free metabolism in the bird inner retina supported by the pecten
https://doi.org/10.1038/s41586-025-09978-w

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

提供元

プロフィール画像

ナゾロジー

ナゾロジーはkusuguru株式会社が運営する科学情報サイトです。読者をワクワクさせ、科学好きな人を増やすことを理念に運営しています。 現在、世界はたくさんの便利なテクノロジーによって支えられています。しかし、その背景にある科学の原理や法則を知る機会はあまりありません。 身近に潜む科学現象からちょっと難しい最先端の研究まで、その原理や面白さを分かりやすく伝えられるようにニュースを発信していきます。

あなたにおすすめ