五感をフルに使って整う粋なリセット術

横倉先生のクリニックが他と一線を画すユニークな点は、ストレスケアのプログラムとして「茶道」を実践していることです。
茶室に掛けられた一幅の軸、四季を告げる素朴な茶花(ちゃばな)。そこにあるしつらえは、「亭主は客を美しく生かし、客は亭主の心を受け止める」という、互いを生かし合う究極の関係性のデザインです。
茶道家でもある横倉先生は、自らしたためた書や季節の茶花で患者さんを迎え、その空間ごと“整える”ことで心をほぐしていきます。
こうした生き方の美学を五感で体験する時間が、人間関係や日々の役割に疲れた脳に静かな余裕を取り戻し、自分自身をやさしく調整していく自己回復力を引き出してくれるのです。自宅でもこのエッセンスは取り入れられます。季節の花を一輪飾る、お茶を丁寧に淹れて静かに味わう。そんな小さな所作だけでも、茶室の精神がそっと息づき、日常の中にふっと心が緩む“余裕”が生まれていきます。
我慢しない「快食療法」のススメ

食に対しても、横倉先生は学会発表も行っている「快食療法」を提唱しています。そのルールはきわめてシンプル。「自分が本当に食べたいものを、食べたい時に、気持ちよく食べる」というものです。
多くの女性が「太るから」「身体に悪いから」とカロリーや栄養価の計算に縛られ、食べる喜びを制限しています。しかし、ストレスで甘いものが無性に欲しくなるのは、脳のエネルギー源であるブドウ糖を求めている自然な身体の防衛反応。そんな時は罪悪感を抱く必要はありません。精製された白砂糖ではなく、ビタミンやミネラルが豊富に含まれた黒糖をひとくち、丁寧に味わって脳を満たしてあげればいいのです。
「ながら食べ」を卒業し、五感で命をいただく
さらに先生は、現代人に蔓延する「ながら食べ」に鋭く警鐘を鳴らします。
食事とは、見る(視覚)、嗅ぐ(嗅覚)、触る(触覚)、味わう(味覚)、咀嚼音を聞く(聴覚)という、五感のすべてを総動員する贅沢なアクト(行為)。スマホを見ずに五感をフル活用し、目の前の食卓と丁寧に向き合うことで、脳は深い満足感を獲得します。しっかり味わって食べれば、脳に“快”が届き、とても贅沢な日常になります。

こうした日常の何気ない振る舞いに美意識を持つ「粋(いき)」な生き方こそが、サプリメントや薬に頼らない最高のストレスケア(ベネフィット)になるのです。

