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「KADOKAWA」はどこへ向かうのか―― 夏野氏のDX・IP量産戦略、その評価が問われる <連載:アニメノミライ・ねとらぼ支店>

「KADOKAWA」はどこへ向かうのか―― 夏野氏のDX・IP量産戦略、その評価が問われる <連載:アニメノミライ・ねとらぼ支店>

歴彦氏が築いたもの――合併とメディアミックス

 KADOKAWAという会社の本質を語るうえで、歴彦氏のメディアミックス手腕は避けて通れません。

 歴彦氏は、兄・角川春樹氏との激しい相剋のなかでキャリアを歩みました。当時の出版の壁を崩す破天荒なアプローチで国民的ヒット映画を志向した春樹氏に対し、歴彦氏が確立したのは、雑誌を起点とした緻密で同時多発的なメディアミックスです(この経緯はマーク・スタインバーグ『なぜ日本は〈メディアミックスする国〉なのか』〔中川譲訳、大塚英志監修、2015年〕に詳しい)。

 その核心は、雑誌をプラットフォームにした点にあります。誌面でさまざまな作品と作家を育て、読者コミュニティを醸成し、そこから複数の作品を同時にアニメ、マンガ、ゲームといったメディアミックスへ展開していく。雑誌そのものが、IPのインキュベーターでありショーケースでした。

 プラットフォームの展開は自前の媒体にとどまらず、2000年代以降、エンターブレイン、中経出版といった出版社を次々と傘下に収め、KADOKAWAという複合体を築きました。そして、ネットの時代を迎えて「次のプラットフォーム」として選んだのがニコニコです。

 2014年のKADOKAWA・ドワンゴ経営統合――ニコニコ動画のネット企業と伝統ある出版企業の合併は、わたしには極めて正しいアプローチに見えました。連続買収で版図を広げてきた歴彦氏にとって、雑誌からネットへの一手は自然な延長で、夏野氏や川上氏が経営に加わったのも、この合併がきっかけでした。雑誌起点のビジネスの先にネットのプラットフォームを据える――その判断は、いま振り返っても先見性があります。

春樹氏に続き、歴彦氏もまた――創業家と五輪汚職

 兄・春樹氏と歴彦氏の関係も非常に興味深いものがあります。兄・春樹氏が薬物事件で会社を追われ、その後を継ぐ形で社外に出ていた歴彦氏が復帰したことは、よく知られています。そして弟である歴彦氏も、東京五輪をめぐる汚職事件に名を連ねることになります。歴彦氏は2022年に逮捕され、一貫して無罪を主張してきましたが、2026年1月、東京地裁は懲役2年6月・執行猶予4年の有罪判決を言い渡しました。大会スポンサー選定の見返りに組織委元理事側へ多額の謝礼を提供した、というのが一審の認定です。ただし歴彦氏は不服として控訴し、記事執筆時点では東京高裁で係争中です。

 そして、総会を目前にした2026年6月16日、事態はさらに異例の展開を見せました。歴彦氏が、夏野氏とガバナンス検証委員だった弁護士を相手取り、名誉毀損と防御権侵害で計2億円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴したのです(注12)。

 争点は、KADOKAWAが2023年に公表した調査報告書が、本人に弁解の機会を与えないまま「贈賄に該当する可能性が高い」と認定・公表した点です。会見で歴彦氏は「経営に復帰する野心はない」と述べ、提訴は「人質司法」への問題提起だと位置づけましたが、創業家の元トップが自ら引き上げた現社長を総会直前に訴える状況になっています。

(注12)角川歴彦氏が夏野剛社長およびガバナンス検証委員(國廣正弁護士)を相手取り、名誉毀損・防御権侵害を理由に計2億円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴(日本外国特派員協会で会見、代理人は郷原信郎弁護士)── 2026年6月16日(文藝春秋オンラインほか各報道)。

配信元: ねとらぼ

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