敵を描かず「日常」に徹した「魔法つかいプリキュア!」
村山氏がプリキュアで初めてシリーズ構成を担当したのが「まほプリ」です。10年前の作品ながら今も熱量の高いファンが数多くいることでも知られています。
ナシマホウ界(人間界)の朝日奈みらいと、魔法界のリコの出会いから始まり、妖精のはーちゃん(花海ことは)と、しゃべるクマのぬいぐるみ「モフルン」も含めた4人を「疑似家族」と捉えた描写が大きな特徴です。
「敵の描写」をあえて控えめにすることで、プリキュアたちの「日常」に焦点を当てた構成は村山氏によるものです。敵はあくまでも「ぶっ飛ばされるだけの存在」にすることを当初から決めていた、と後のインタビューで語っています。
あえてねらって、敵については掘り下げませんでした。敵のほうが複雑な事情があることもあって、敵のシナリオを書いたほうが面白いのはわかるんです。でも、プリキュアたちの話をメインにするにあたって、敵をフィーチャーしてはダメだろうと考えて、極力排除しました。敵はあくまでもぶっ飛ばされるだけ。それは当初から決めていました。
引用:『魔法つかいプリキュア! オフィシャルコンプリートブック』(Gakken)P90
本作で描かれたのは「世界を救うこと」ではなく「一緒に過ごした時間」なのです。
そんな「日常」を重視した作品だからこそ、第48話「さよなら魔法つかい!奇跡の魔法よ、もう一度!」でのみらいとリコたちの「別れと再会」には多くのプリキュアファンが涙しました。
大学生へと成長した朝日奈みらいの、十六夜(いざよい)の月あかりの公園での「キュアップ・ラパパ!」を繰り返す“慟哭“のシーンはシリーズ屈指の名場面として今もファンの間で語り継がれています。
「素直な言葉は力になる。思いがつながっていれば、それは奇跡を起こす」、みらいのおばあちゃんのこの言葉が本作が最後に子どもたちに伝えたかったことだったのではないかと思うのです。
このような熱い思いで作られた「まほプリ」は、ファンのみならずキャスト陣も熱量が高いことでも知られ、2025年には大人向けの続編「魔法つかいプリキュア!!~MIRAI DAYS~」が放送されるという異例の快挙も成し遂げています。もちろん、こちらも村山氏がシリーズ構成を務めています。
「スター☆トゥインクルプリキュア!」で描かれた宇宙規模の多様性
村山氏のシリーズ構成作品2作目、2019年放送の「スタプリ」は舞台を地球から一気に宇宙へと広げた作品です。
地球人の「星奈ひかる」とサマーン星人の「羽衣ララ」のコンビを軸に異なる星の文化や価値観の共存を、SF風味たっぷりに描きました。
村山氏は「スタプリ」の制作において、「多様性を認めること」と「決めつけをしないこと」を一番に意識していたと語っています。
一番気をつけていたのは、多様性を認めることと、決めつけをしないということ。(中略)敵に対し説き、教えるというのは「プリキュア」シリーズではよくあることですが、今回は説得していくことよりも、認めていくことを重視する。もちろん、さまざまな違いによってどうしてもぶつかりあうことはありますが、根本では否定しない、全肯定の精神で臨む、ということを考えていました
引用:『スター☆トゥインクルプリキュア オフィシャルコンプリートブック』(Gakken)P80
相手を自分の基準で説き伏せるのではなく、自分とは違う存在をまず“認める”ことから始める、というテーマが描かれました。
こちらも第49話「宇宙に描こう!ワタシだけのイマジネーション☆」でひかるとララの別れと再会が描かれました。
異なる価値観を認め合い、全宇宙を救ったプリキュア。
しかし妖精フワの力が失われた結果、地球人と宇宙人との自由な往来はできなくなり、ひかるとララにもまた別れの時が訪れました。
数年後、大人になった星奈ひかるが、夢をかなえ「日本初の有人宇宙ロケットの宇宙飛行士」として宇宙空間へと飛び立つラストシーン。
そのロケットの窓から差し込む強い光。そして懐かしい「フワー!」の声。
驚きに目を見開くひかるの瞳には涙。彼女の「キラやば~っ★」のセリフで物語は幕を閉じました。
二人の再会を直接的な絵で見せるのではなく、あえてその先の物語を「子どもたちの無限のイマジネーション」にゆだねる。
まさに「スタプリ」という作品のテーマを体現した最高のラストシーンでした。

