地道な修正を重ね続けた公認AI合成音声開発の裏側──
AIに声を学習させるため、収録では五十音ではなく、現代的な会話や古い言い回しや感情を込めた文章、全く意味をなさないものなど、さまざまな文を読み上げたと浪川さん。例えば同じ言葉でも感情や文脈により、発音や抑揚が変化することから、さまざまな文章や感情のパターンを収録する必要があったと振り返ります。
そうした収録データを元に技術者が「もっと不安そうに」「明るく」といった指示をAIに与え、いくつかの音声パターンを生成。浪川さん自身が確認の上、アクセントや感情表現などについての修正指示を出し、技術者がトライアルアンドエラーを繰り返していったそうです。
その上でどうしても理想的な表現ができない場合には浪川さんが追加で音声を収録。再びAIに学習させることにより、精度を高めていっているとのことでした。
人間にしかできない仕事とAIにしかできない仕事がある──
「(公認AI合成音声を使うよりも)今は僕がしゃべった方が早いんですよ」と冗談混じりに話してくれた浪川さんですが、開発を続けている理由として、人間にしかできない仕事がある一方で、AIにしかできない仕事もあると考えているからだと明かしてくれました。
例えば、サービス利用者一人一人の名前を呼ぶというコンテンツがあった場合、声優本人が数千、数万種類の名前を収録するのは現実的ではありませんが、公認AI合成音声を用いることでそれらが容易になる可能性があります。
一方で、細かな感情の変化や相手の芝居を受けて生まれる表現は、人間の声優にしかできない部分だといい、浪川さんは声優をAIに置き換えることではなく、互いの得意分野を生かした「共存」を目指していると語りました。

