高市政権に決定的に足りていないもの
それは歳出削減である。
減税と積極財政は同じではない。税を下げ、その分だけ政府支出を削れば、国債を増やさずに国民の負担を軽くできる。政府から民間へ金と決定権を戻す改革である。
一方、税を下げながら政府支出も増やし、不足分を国債で埋めるのが積極財政だ。政府の規模は小さくならない。現在の納税者から取る代わりに、将来の納税者から借りるだけである。
高市政権は「責任ある積極財政」を掲げる。だが、私は積極財政そのものが間違っていると考える。政府支出を増やせば成長が生まれ、税収増で借金を処理できるという考え方は、都合の良い前提に頼っている。
政府は投資の失敗に責任を取らない。自民党政権は、クールジャパン、少子化対策、AI、半導体、脱炭素、コロナ対策、地方創生と、聞こえの良い名目で予算を広げてきた。
失敗しても政治家の財布は痛まない。事業は「検証中」とされ、別の名前で続く。民間なら撤退する事業も、政府では前年実績が翌年予算の根拠になる。
高市ショックには3つの波があった
「骨太の方針」では、AIや半導体など17分野を中心に、2040年度までの官民投資を累計370兆円超とする想定が示された。だが、民間企業が自分の金で行う投資と、政府が税金や国債で行う支出は別物だ。官民を足した巨大な数字は、政府負担を見えにくくする。
市場が見ているのは夢の総額ではない。どの補助金を切るのか。どの基金を廃止するのか。どの外郭団体を整理するのか。社会保障の無駄をどこまで削るのか。その数字である。
高市ショックには3つの波があった。
第1波は2025年10月である。高市氏が自民党総裁選に勝つと、積極財政と金融緩和への期待から株高と円安が進んだ。
だが、公明党が連立離脱を表明すると相場は逆回転し、連休明けの日経平均は1,241円48銭下落した。米中対立や政局不安も重なったが、高市トレードの弱さが露出した。
第2波は2026年1月である。衆院解散と食品の消費税停止が打ち出されると、国債の買い手が細った。税収減は年間5兆円規模と見られた。減税が悪いのではない。同額以上の歳出削減を示さなかったことが悪い。

