遺産分割協議はやり直しができる?再協議の方法や注意点など

遺産分割協議が終わってから後悔し、協議をやり直せないものか、と考える方もいます。結論から言うと、簡単ではありませんが、相続人の総意であればやり直しは可能です。事情によっては、そもそもの協議が無効になるケースもあります。ただし、協議をやり直すと二重課税などのリスクもあり、注意が必要です。

遺産分割をやり直す際の注意点

有効な遺産分割協議をやり直す際に注意が必要なのは、税金です。最初に相続した際に払った相続税とは別に、贈与税や所得税、登録免許税などが追加でかかる可能性があります。

贈与税・所得税の二重課税

税法上、一度納税された相続税はそこで完結しています。したがって再協議で遺産をほかの人に渡すと、「贈与」にあたると見なされ、贈与税が発生する場合があります。また対価を受け取った場合は収入となるため、所得税を払わなければならない可能性があります。

このように当初支払った相続税のほかに、贈与税や所得税が発生することも考慮する必要があります。

登録免許税などの二重課税

遺産が不動産の場合は登記の変更が必要なので、新たに登録免許税を支払う必要があります。またこの場合も贈与や売買にあたり、不動産取得税が発生する可能性があります。
つまり税法上は、遺産の分配をやり直すというよりは、一度受け取った遺産をほかに移動することになるため税金が発生し、結果的に二重課税になるというわけです。

ただし、協議の取り消しや無効の場合は、この限りではありません。協議をやり直したというより、そもそも最初の遺産分割が正当に成立していないことになるので、相続税のみで済むこともあります。

また、第三者に財産の権利が移転していた場合は、やり直すことはできません。どういうことかと言うと、最初の相続人が不動産などをすでに第三者に売却していた場合は、取り返せないということです。
分配をやり直したからと言って、すべて元の状態に戻せるわけではないので注意してください。

このように相続をやり直そうとすると税金や権利など複雑な問題が絡んでくるため、税理士や弁護士など、専門家の力を借りることを考えても良いでしょう。新たに税金が発生するのか、またどれくらいかかるのか事前に確認しておくと安心です。

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まとめ

遺産分割協議は原則やり直せませんが、相続の権利を持つ人すべてが承知するなら再度協議できます。

また、脅されたり騙されたりしたような場合は取り消すことができ、新しい相続人が現れるなど、手続きに不備がある場合は協議そのものが無効になります。

協議を取り消すことには時効があるものの、やり直しであれば時効はありません。ただし二重課税が発生する可能性もあるので、事前にしっかり確認して慎重に検討しましょう。

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堀智弘

堀総合法律事務所代表、大阪弁護士会所属。単独で事務所の代表を務め「経営のわかる弁護士」として中小企業経営者に寄り添うとともに、素早く丁寧で法律論に囚われない柔軟な対応により一般の市民の方々からも好評を得ている。業務は中小企業の支援と相続問題が中心。年間相談件数300件以上。セミナー・講演実績も多数。