自分を表現し、成長させる場「Mont St. Clair(モンサンクレール)」。そして更なる高みを目指して作り出す、新しい教育のかたち

その後も名誉あるコンクールを次々と優勝した辻口シェフは、1プレイヤーとしてやりつくしたと感じたそう。
そして次のステップとして独立へ。1998年、辻口シェフが当時30歳の時に初めて設立したのが、この「Mont St. Clair(モンサンクレール)」です。

“セラヴィ!(これが人生)”から始まった辻口博啓シェフのキャリア。製菓界の新時代の拠点「Mont St. Clair(モンサンクレール)」(自由が丘)

辻口シェフ「『Mont St. Clair(モンサンクレール)』は自分自身の学んできたことと、感じ取ったことを形にするお店。そして、『紅屋』再建に必要な経験と資金を積み上げるための場でもありました」

18歳のときに惜しくも倒産してしまった「紅屋」を立て直すことは、辻口シェフの“叶えるべき夢”でした。そして6年後、二子玉川に「和楽紅屋」をオープンし、夢を達成。

プレイヤーからマネージャーとして、お店や人を動かす立場になったことで改めて、教育とマネジメントの大切さを感じたと言います。

“セラヴィ!(これが人生)”から始まった辻口博啓シェフのキャリア。製菓界の新時代の拠点「Mont St. Clair(モンサンクレール)」(自由が丘)

辻口シェフ「僕がパティシエになってから、『Mont St. Clair(モンサンクレール)』を創設するまで、製菓界隈は凄く変わったと思います。また世界中が現在、激変の中にある。そんな世界情勢を見ていると、これからパティシエを目指す人たちの知識や考え方もどんどんアップデートするべきだと考えました。

例えばいま、お菓子の原材料であるチョコレートや小麦の価格の高騰が著しい。さらに、働き方改革による労働時間の規制があります。働き方改革が叫ばれる中で、昔とは違う今の時代に合った仕事量をこなし、価格とクオリティは維持しなければいけない。

“セラヴィ!(これが人生)”から始まった辻口博啓シェフのキャリア。製菓界の新時代の拠点「Mont St. Clair(モンサンクレール)」(自由が丘)

若手はどうしたって学ぶ時間が必要なので教育の現場で即戦力を鍛えられるよう、石川県に『スーパースイーツ製菓専門学校』を開校しました。酷な労働にただ耐えるのではなく、マネジメントに関する知識と経験を同時に身につけることで、双方に働きやすい環境を作れればと思います」

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季節を感じる夏の「シブスト」。特製クレームシブーストの食感とジューシーなピンクグレープフルーツが醸し出す幸せの味を堪能

過去から現代に活かす温故知新の考えは、辻口シェフのスイーツにも表れています。今回、おすすめいただいた「シブスト」もそんな辻口シェフのスタイル象徴する1つ。

“セラヴィ!(これが人生)”から始まった辻口博啓シェフのキャリア。製菓界の新時代の拠点「Mont St. Clair(モンサンクレール)」(自由が丘)

辻口シェフ「『シブスト』は19世紀、パリのサントノーレ通りの菓子職人が考案した素朴なお菓子です。うちの『シブスト』は季節によって中に入れるフルーツが変わります。この季節はグレープフルーツ。夏場は喉が渇くのでさっぱりとしていて瑞々しさのあるものが好まれます。

型にフィユタージュとカスタードソースのアパレイユを流し込みオーブンへ。焼きあがったらピンクグレープフルーツを並べて、上からクレームシブーストをかけます。最後にキャラメリゼをして完成です」

“セラヴィ!(これが人生)”から始まった辻口博啓シェフのキャリア。製菓界の新時代の拠点「Mont St. Clair(モンサンクレール)」(自由が丘)

クレームシブーストは、きめの細かいイタリアンメレンゲの食感とキャラメリゼしたカスタードクリームの芳ばしい甘さがたまりません。一口食べるとピンクグレープフルーツの酸味が濃厚なカスタードクリームと絡みます。そしてフィユタージュは口溶けの良い軽さ。気が付けば口の中はあっという間に空っぽです。

甘さを緩和するフルーツが主役のスイーツ。季節や素材によっては材料や分量を少しずつ変化させるこだわりよう。そんな中、ピンクグレープフルーツの「シブスト」はムシムシとした暑い夏でも、喜んで食べたくなる至極の一品です。

“セラヴィ!(これが人生)”から始まった辻口博啓シェフのキャリア。製菓界の新時代の拠点「Mont St. Clair(モンサンクレール)」(自由が丘)

辻口シェフ「スイーツを作るときはまず、素材と季節感を意識しています。次に、メインを決めたらその素材をどう調理し、活かすかを考えます。食感や水分量から、焼き菓子が良いか、ケーキが良いか。夏ならグラスに入れたヴェリーヌで表現するかを考えます」