ビリギャル激動の20代。結婚、離婚、そして初めての海外留学を決意するまで〔中〕

金髪にミニスカの高2のギャルは、全国模試の偏差値30。勉強には見向きもせず学校の問題児だった彼女が、塾の先生との出会いがきっかけで猛勉強の末、慶應義塾大学に現役合格を果たす──。"ビリギャル"こと小林さやかさんがその後歩んだ道のりを聞くインタビューの中編は、26歳で結婚したときのエピソードからスタート。

私が合格したのは「地頭」なんかじゃない

考えた結果、なぜ昔の私が変わったのかというのは、環境でしかなかったということに行き着きました。坪田先生が、高校2年のときのギャルだった私に向かって、「物理的に言って今からやれば大学受験には全然間に合うよ」と平気で言ってくれる人じゃなかったら。全国模試の偏差値が30しかない生徒に「それでも大丈夫だよ」と言ってくれる先生って、けっこう少ないと思うんですよね。そういう先生に出会えたことが超ラッキーだった。

それからもうひとつは、学年ビリの娘が「嵐の櫻井翔くんが行っている慶應大学に行きたい」と言ったとき、「あんた、そんなこと言ってないで学校の平均点くらい取りなさいよ」と言う親だったらどうだったか。母が「さやちゃん、すごいね。ワクワクすること見つけたんだね! おめでとう」とキラッキラの目で言ってくれる人じゃなかったら。


イメージ写真(写真AC)

このふたつのミラクルが私にはあって、このパワーがどんなにすごいかを親御さんや先生に伝えて、大人たちを変えないとダメだと思うようになりました。でないと最終的にいつも、「ビリギャルって、もともと頭がよかったんだよ」という話になってしまう。日本人は「地頭」という言葉で片付けるのが好きだけど、「地頭」なんて言葉、英語にはありません。「『地頭』とかにしないで、もうちょっと考えてみない?」 ということを、説得力をもって伝えられるような人になりたいなあと思ったんです。

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大人が変わると子どもは変わる

聖心女子大の大学院では、益川弘如先生のもと、公立の中学の先生たちに協力していただいて「学習科学」の研究に取り組みました。「学習科学」とは「人って、どうやって賢くなるの?」とか「どんな環境があればもっとよく学べるの?」ということを追究する心理学の分野の学問です。

先生たちには、黒板を使って説明して生徒はそれをノートに写すという授業だったのを、先生が用意したテーマと資料をもとに生徒同士が対話を通じて学ぶスタイルに変えてもらって、子どもたちの変化を見ました。

生徒たちの変化はすぐに表れて、「こっちのほうが楽しいし、理解しやすい」とか「記憶に残りやすい」と口々に言うようになりました。先生たちも「あんなふうに楽しそうに授業をうける生徒たちを初めて見ました」と感動して、こうやって学校の授業のやり方が変わるだけで、生徒たちの気持ちや学びに向かう姿勢が顕著に変わることを、確認することができました。


イメージ写真(写真AC)

実際はここまで来るのは簡単ではなくて、1年くらい試行錯誤していました。先生たちの協力も初めから得られたわけではなかったし、生徒たちから「この授業は楽しいけどテストに出る範囲がわからないから元に戻してほしい」と言われたこともありました。しかもコロナ禍もあって先生も私もたくさん悩んだり止まったり。

本当に大変でしたが、なんとか研究を続けるなかで何よりも大きな成果だったのは、先生たちがとても前向きに学んでくれたことでした。そして、この研究を通して、なぜ高校生のときの私があんなふうにできたのか、その理由がちゃんと説明できると思うことができました。そしてこのあと、私は留学しようと決意するのです。