落ち着いた桃色で異彩を放つ店内。OPEN前の店舗にもふわりふわりと人が集まる

2014年〜2019年の銀座三越のバレンタインイベント他で、圧倒的な世界観と、独自の「食」へのこだわりで人々を魅了してきたクリエイティブスタジオ「KLOKA(クローカ)」。
摩訶不思議な世界観とともに、クオリティの高いスイーツも提供する、独自のスイーツインスタレーションは、スイーツライターとして取材に各所伺って来た中でも強烈な印象を残すものばかり。
その「KLOKA」がついに初の常設店を2023/1/21代々木上原にOPENすると伺い、店主の矢島 沙夜子さんにお話を伺って来ました。

「桃源郷の土産物屋」でもある?!圧倒的な世界観は一度訪問すべき!

“「the SMALL UTPIA」の時の桃源郷のイメージも思い起こす世界観内装ですね、テーマやインスピレーションを教えてください。”

「小楽園」という名前の通り、小さな楽園のような世界を作りあげました。
シルクロードを辿ってたどり着いた、「桃源郷の土産物屋」をイメージしており、さらに「八百万の神々が、地上のものを楽しみながら憩う」そんなイメージもあります。


山水画と、アーチ装飾が合わさり独自の世界観を醸し出す

そのため、桃源郷をイメージした桃色を基調に、中国の山水画、ベトナムでオリジナルで作られた床のタイル、ロシアの古い様式やアラビア様式を想起させるアーチや装飾、日本の欄間、ヨーロッパヴィンテージの要素を家具や小物に取り入れるなど、「和洋」だけに限らない多様な様式を随所にあしらっています。


ベトナムでオリジナル作成されたというタイル。

ティーサロンのメニューや食器、お菓子にもその「折衷」は表現しており、
ショコラショー(クラシック¥850・アステカスパイス¥880の2種類)、台湾茶(¥1,540~各種)、和のスパイスを使ったチャイ(¥900)などが、これまたヨーロッパ式ティーポット、台湾式茶器、インドのチャイグラス、日本の銘々皿などをあえて織り交ぜて世界観を構成しています。
お菓子では、日本の伝統菓子である「小楽園のおこし」(¥1,950)も、お醤油で「みたらし団子風」の味わいをもたせつつも、バター、マカデミアナッツ、カシューナッツなどを使うなど「和にとらわれない」世界観を表現しています。


ヨーロッパのカトラリー、チャイグラスに囲まれて「日本の山」をいただく

“矢島さんは、アートが土台と伺いましたが、スイーツのインスピレーションや素材のアイデアはどのようなことから得られていますか?”

スタジオロケット(現在は表参道に移転されており当時原宿に拠点を置かれていた原宿ROCKET)さんの企画をきっかけに食×ARTのインスタレーションを手がけることになり、毎回テーマを決めて様々な体験型のスイーツインスタレーションを考えてきました。


9席のTEA SALONのため予約優先

今回の「小楽園」は桃源郷の土産物屋をイメージしていますが、
八百万の神々が、地上の山々をお菓子として楽しんでいる、そんなイメージで作り上げています。


「雛山(利尻山・冬¥990テイクアウトのみ)」ラム酒に漬け込んだ自家製レーズンのガナッシュ、オホーツク海の塩、利尻の昆布まで使って作りこまれた1粒

元々「伝説の中に出てくる食にとても興味があり、想像することが好き」でした。
また「自然界のものを圧縮したようなジオラマが好き」でもあり、
飛行機の上から眺める山を見て、スイーツのように食べられたらと思っていました。

国土地理院の実際の地形データを使用して作り上げたスイーツ「山菓子」(富士山・春¥4,860/利尻山・冬¥3,450他)は、
形状は日本に実在する本物の山々を生かしたケーキ。
また「雛山」(5個入り¥3,780)はこの「山菓子」の世界をぎゅっとボンボンショコラに閉じ込めたお菓子です。


「山菓子(富士山・春)¥4,860(イートイン¥4,950)」桜の塩漬け、抹茶のケーキに小豆、静岡の抹茶を使ったショップオープン記念の新作

素材については、山を決めた際に、その山でイメージする「季節」をまず振り分けました。

そして、山のある地域の特産品を必ず入れ、イメージした「季節」にあう味わいを実現できるよう何パターンもトライしました。
当然美味しくなければいけないので、イメージ、素材、味わいが合致するものにたどり着くまでが大変でした。
「富士山」だけは地域の特産ではなく、より「日本を代表する山」として意識し、国の花でもある桜を使い、和素材として人気の抹茶や小豆を使い、「より日本感のある味わい」にしています。

スイーツの企画開発は自身でまず行い、職人さんに作ってもらっていますが、実は仕上げ作業は、この「小楽園」のキッチン内で行なっているんですよ。

インパクトだけではない、「こだわり」の味に納得。


「雛山5こセット(¥3,780)」

筆者は今回、発表会とレセプションにお邪魔し、また購入し、可能な限り実食させていただきました。
ジオラマをフォークて突き刺しているかのような不思議な感覚を味わう「山菓子」と「雛山」は、それぞれ土地の特産を生かしつつ、も決して和菓子風にはならず、季節イメージに沿って爽やかなものから濃厚なものまで、味わいの幅がありました。


「山菓子/桜島御岳・夏¥3,450(イートイン¥3,520)」鹿児島名産の黄麹仕込みのいも焼酎を効かせたパッションフルーツのガナッシュ。意外な組み合わせで「桜島の夏」を表現

2022年秋には「桜島御岳(夏)」「利尻山(冬)」「由布岳(秋)」「大室山(晩春)」「八丈島西山(夏)」がスイーツファンの多く集まる伊勢丹新宿店でポップアップを行い完売続きとなったのも納得。
また「小楽園おこし」も従来のおこしより歯ざわりはカリッと軽やか、それでいて懐かしさを感じるみたらし団子の味わいと、印象深いバターや柚子胡椒がポイントになって、ついつい手が伸びる逸品でした。


バターやナッツで懐かしいようで新たな味わいの「小楽園のおこし」

美味しく、印象深い味わいのものが多いためギフトにもおすすめです。
オリエンタルな印象のBOXも特徴的で、受け取った方からも印象深いギフトになるのではないかと思います。
スイーツのみで楽しむのではなく、お店でいただくとより「小楽園」の世界観に浸ることができるのでおすすめです。

矢島沙夜子(Sayoko Yajima)さんプロフィール


向かって左が店主の矢島 沙夜子さん。

@sayokoyajima
東京出身。アートディレクター/アーティスト。
クリエイティブスタジオKLOKAに所属。
広告やファッション誌のディレクション、プロダクトデザイン、ショップのプロデュースなど幅広い分野で活動中。
ファンタジックで物語性のある作風が特徴で、茶運び人形が自動走行しておもてなしをする「桃源郷」をテーマにしたお菓子屋や、チョコレートでできた惑星をその場で掘削する店など、ユニークな食にまつわる作品で人気を博した。
2023年代々木上原に和洋菓子店「小楽園 TEA SALON & BOUTIQUE」をオープン。桃源郷の土産物屋をコンセプトにした、日本のお伽話のような、遠い異国のような不思議な店内で、日本の山々を手のひらサイズにした「山菓子」などを販売。今後も和洋折衷の一風変わったメニューを提供していく予定。

小楽園 TEA SALON & BOUTIQUE 店舗概要

About Shop
名称:小楽園 TEA SALON&BOUTIQUE
住所:東京都渋谷区元代々木町10-9
営業時間:12-19:00
定休日:火曜日
座席数:9席 ※予約優先。詳細は公式インスタグラムよりご確認ください。
価格帯:¥550~5,000

azuma(蒼蓮)

チョコレートと日本酒のライター

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チョコレートが好きすぎて、仏ショコラティエブランディングにも携わっていた、チョコレートエキスパート・日本酒唎酒師資格他を持つスイーツ系ママライター。
伊勢丹新宿公式サポーターイセタニスタ他(@azuma0326)