衰弱していたのが見違えるほど元気に!

ここで、漢方治療を受けて逆流性食道炎が改善した患者さんの症例を紹介しましょう。

Aさん(55歳・女性)は、逆流性食道炎と診断されて、長年プロトンポンプ阻害薬(PPI製剤)などを服用していました。そのためか、萎縮性胃炎の所見がありました。

カレーや脂っこい物を食べないなど食事に気をつけて、睡眠時には枕を高くして寝ていましたが、胸やけが治りません。ゲップがよく出ていて、疲れやすいようでした。なかなか症状が改善しないので、知人の紹介で当院に来院されたということでした。

そこでAさんには、半夏瀉心湯や安中散を処方してPPI製剤と併用してもらいました。すると2週間ほどで、天ぷらを食べると胸やけがひどくなることがあるものの、症状は改善しました。

さらにPPI製剤を中止してからは、胃もたれが軽減して食欲がわき、元気になりました。その後もおおむね順調であり、快適な生活を続けています。

Bさん(85歳・女性)は、胃カメラ検査で、食道や噴門部に赤みがあることが判明してからは、PPI製剤を服用していました。

その後、食後に胃が苦しいと感じるようになりました。しだいに食は細くなり、体力が低下。なかなか改善せずに衰弱していくことに不安を抱えて、当院にいらっしゃいました。

診察すると、Bさんは舌炎になっていました。舌は炎症が起こって真っ赤。乾燥していて唾液がほぼ出ない状態です。食べるのも話すのもつらい状態で、胃の働きは弱っていました。

Bさんは脾胃の力が弱くなる年齢です。加えて薬で胃酸を抑えていることで、食事がとれなくなり、栄養失調で体が弱っていると考えました。そこで、半夏瀉心湯や安中散などを処方して、PPI製剤と
併用してもらいました。

すると2週間後には元気になり、笑顔が見られました。食事はよくとれて、舌のヒリヒリした痛みが消失したそうです。

その後、PPI製剤を中止して漢方治療を6ヵ月継続したところ、Bさんは見違えるように元気を取り戻しました。本人が身辺整理をしようと考えるほど一時は体が弱っていましたが、漢方治療後は大好きな洋裁を再開できるまで回復したのです。

逆流性食道炎の治療は、PPI製剤と漢方薬による治療が適しています。漢方治療は食道や胃の下に送る働きを改善して、逆流に対する原因治療ができると考えられます。

西洋薬だけで逆流性食道炎がなかなか改善しない人は、ぜひ漢方治療も受けてください。

趣味を再開できるほど回復!

この記事は『壮快』2022年11月号に掲載されています。

画像参照:https://www.makino-g.jp/book/b612666.html