近年、アメリカで行われた大規模調査の結果は、日本人にとっても、逆流性食道炎の予防や改善を考えるうえで大いに参考になります。精白していない全粒穀物を取り入れること、高脂肪食を控えること、消化に役立つ食材とること、そして高FODMAP食との関係など、逆流性食道炎の予防や改善に役立つポイントを解説します。【解説】細田俊樹(あまが台ファミリークリニック院長)

解説者のプロフィール

細田俊樹(ほそだ・としき)

あまが台ファミリークリニック院長。1976年生まれ。北里大学医学部卒業。家庭医療専門医(総合診療専門医)。医療法人社団カレスアライアンス日鋼記念病院、北海道家庭医療学センター、亀田総合病院家庭医診療科、茂原機能クリニック、藤島クリニック、悠翔会在宅クリニック、さんむ医療センター総合診療科を経て現職。webやYouTubeなどで、さまざまな健康に役立つ情報を精力的に配信している。

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高脂肪食に気をつけて胃にやさしい食生活を

逆流性食道炎は、食生活をはじめとする生活習慣が、その発症に深くかかわっています。最近、そのことを示唆する研究論文が、アメリカで発表されました。その内容を紹介しましょう。

この研究では、逆流性食道炎を患っている人を含む、42~62歳の女性約4万2000人を対象に、10
年間追跡調査を行いました。その結果、

「BMI([体重(kg)÷身長(m)の2乗])が18.5以上25未満(正常体重)」
「禁煙」
「1日30分以上の適度な運動」
「全粒穀物や野菜、果物などをよく食べる」
「コーヒーや紅茶、炭酸飲料の飲用は1日2杯まで」

という5つのライフスタイルを実践している人は、そうでない人と比べて、逆流性食道炎のリスクを
50%近く減らせたのです。

Raaj S. Mehta et al. “Association of Diet and Lifestyle With the Risk of Gastroesophageal Reflux Disease Symptoms in US Women” JAMA Internal Medicine April 2021 Volume 181, Number 4; 552-553. をもとに作図

この研究結果は、私たち日本人にとっても、逆流性食道炎の予防や改善を考えるうえで大いに参考になります。

そこで、私が患者さんたちに指導していることも含めて、特に食事について逆流性食道炎の予防や改善に役立つポイントを解説しましょう。

ポイント
全粒穀物を取り入れる

玄米や分づき米(五分づき米など、ぬかや胚芽を残して精米した米)、全粒粉のパンなど、精白していない穀物のことを「全粒穀物」といいます。

全粒穀物は食物繊維が多く、肥満予防にも役立つので、白いパンや白米よりも、全粒穀物を主食にするのがよいでしょう。

白米に雑穀を混ぜたり、キノコや海藻など食物繊維が豊富な食品を積極的にとったりするのもよい方法です。

ポイント
高脂肪食を控える

逆流性食道炎の症状を抑えるには、消化のよい食事が望ましいものです。3大栄養素(炭水化物、たんぱく質、脂肪)のなかで、最も胃の中に長くとどまりやすいのが、脂肪です。

特に肉類やバターなどの動物性脂肪、洋菓子やスナック菓子に含まれる油脂は、消化に時間がかかります。

肥満を防ぐ意味でも、動物性脂肪や砂糖の多い食べ物は控えめにして、たんぱく源は主に魚介類からとるとよいでしょう。

肉類を食べるときは、サラダなど野菜のおかずから食べる「ベジファースト」がお勧めです。先に野菜を食べるようにするだけでも、油の吸収を抑えて逆流を予防してくれます。

ポイント
消化に役立つ食材をとる

「肉を食べたい」という人にお勧めの食べ方があります。それは、大根おろしといっしょに食べることです。

大根おろしには、プロテアーゼというたんぱく質の分解を促進する酵素が含まれており、肉の消化を助けてくれます。同じような働きを持つブロメラインという酵素を含む、パイナップルもお勧めです。

大根おろしはプロテアーゼのほかに、デンプン(糖質の一種)の分解を促すジアスターゼという酵素も含まれています。

ヤマイモやカブもジアスターゼを多く含んでいるので、こうした食品を食事に取り入れると効果的です。

ポイント
胃粘膜を保護する食材をとる

オクラやモロヘイヤ、サトイモ、レンコンなどには、食道や胃の粘膜を保護する成分が含まれています。

牛乳やヨーグルトなどの乳製品も、胃の粘膜を保護する働きが期待できるので、上手に取り入れるとよいでしょう。

ポイント
誘発食品を控える

誘発食品とは、カフェイン飲料や炭酸飲料のことです。

前述の研究結果に加えて、コーヒーや紅茶などのカフェイン飲料は、胃酸の分泌を促し、炭酸飲料は胃で発泡して胃酸の逆流を助長すると考えられています。こうした飲料は、1日2杯以下に抑えましょう。

また辛い食べ物や香辛料も刺激物として胃酸の分泌を促しますので、控えてください。

こうした「何を食べるか」と同時に、食べ方や食習慣を見直すことも重要です。人間の胃の容量は、1.5~2Lくらいといわれています。一度に大量に食べたり飲んだりすると、食べ物や飲み物を胃から腸へ送り込めなくなります。

食べ過ぎを防ぐためには、満腹感が感じにくくなる早食いやながら食いをせずに、よく噛んで食べましょう。よく噛むことは食べ過ぎを抑えて、消化の手助けになります。意識して食事をしてください。

夕食は軽めにして、就寝まで時間を空けることも重要です。夕食の時間が遅くなる人は、夜のドカ食いを防ぐために、夕方に軽食をとるとよいでしょう。ナッツなどで小腹を満たしておくのがお勧めです。

逆流を起こしやすい食べ物には個人差があります。具体的に自分はどんな食べ物で逆流が起こりやすいかを知るには、食事日記をつけるとよいでしょう。

そして、原因となる食べ物がわかったなら、その食品をなるべく控えるようにします。