上野樹里さんがアパレルブランドをスタート。人と人、思いを繋ぐものづくりを

人生100年時代と言われる昨今、働き方や家族のあり方、学び方など生き方そのものが多様に変化してきている。人生の転機をチャンスに変えた人たちは、次のステップをどう踏み出したのだろう? 

そんな先人たちの話を聞く連載「ネクストステージ」。第5回はサステナブルなアパレルブランドTuiKauri(トゥイカウリ)を立ち上げた俳優の上野樹里さんにフォーカス。昨年の春に事務所を独立。俳優として活躍しながらアパレルという新しい分野に挑戦した彼女の目線の先にあるものとは…?

着る人も作り手も心地よいプロダクトを作りたい

俳優の上野樹里さんが、アパレルブランド「TuiKaui(トゥイカウリ)」をスタート。コンセプトは、「Try to Kind〜本当の心地よさを求めて〜」。使用している素材はすべて天然素材で、鮮やかなカラーリングはボタニカルダイによるもの。日本の技術と、天然素材や資源の循環を意識した、人にも地球にもやさしいものづくりを目指す。

「撮影では長時間衣装を着ているので、天然素材で衣装にアタリの出ない薄手のインナーウエアを探していたのですが、なかなかいいものが見つからない。心地良くておしゃれな天然素材のインナーウエアがあればいいのにな。 と思ったのがきっかけです。夫婦ともに親交のあるデザイナーの安藤大春さんに相談したところ、マシンウォッシャブルのシルク素材とボタニカルダイの技法を提案していただき、プロジェクトが動き始めました」

ミュージシャンの夫・和田唱氏のバンド「トライセラトップス」のデビューシングル『Raspberry』にちなみ、デビューコレクションのテーマは「ラズベリー」に。色鮮やかなインナーウエアやルームウエア、ワンピースなどの洋服は、すべてラズベリーから抽出した染料を用いたボタニカルダイと天然素材を掛け合わせたもの。作り手の気持ち、着心地のよさ、自然を感じられるコレクションを展開する。

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天然素材をもっと身近に暮らしの一部に

「化学繊維が原因の肌荒れに友人が悩まされていたり、私自身、生理用品を天然素材のものに替えたら体調が変化した実感があり、肌に直接身につけるものは、素材も染料も天然のもので作りたいという思いがありました。オーガニック素材の洋服を着ていても、その下のインナーウエアが化学繊維だったら意味がないですよね。肌は生きているし呼吸しているから、本当に良い素材を身につけて、体や気持ちの変化を体感していただけたらと思います」


糸ではなくその前の原料の段階でウォッシャブル加工を施しているため、生地の風合いにムラがなく繰り返し洗っても劣化しにくい特徴を持つ。ウォッシャブルシルク キャミソール¥23,100 ウォッシャブルシルク タンクトップ¥24,200 ウォッシャブルシルク ロングスリーブ カットソー¥25,300

インナーウエアはすべて、吸湿性や殺菌効果に優れ、肌に心地よいシルク素材。手入れに負担がかからずデイリーに使えるよう、マシンウォッシャブルのシルクを採用した。ブラトップやタンクトップのパットは入れる位置を脇下の縫い目と合わせることで洋服に響かないように配慮。縫い目を外に出した縫製で、徹底してストレスフリーの着心地を目指した。

世界で1社のみ、日本の工場が手がけるボタニカルダイは、従来の草木染めとは異なり、植物の花、葉、果実などから抽出した染料をタンパク質で生地に吸着させ、植物本来の持つ鮮やかな発色を実現。カラーリングにはかなりこだわったと言う。

「重く見えがちな黒はチャコールに。地味に見えがちなベージュはゴールド寄りの色味に。ベーシックカラーに、心が晴れやかになるようなピンクとブルーを加えた4色展開で、ファッション性も大事にしています。おうちでそのまま1枚で着たり、洋服からのぞかせてもサマになるようにカッティングにもこだわりました」

デザイナー安藤氏の助言により、インナーウエアだけでなく洋服も手がけることに。最初は自分に洋服作りができるのだろうかと、半信半疑だったという。

「ルームウエアとTシャツは絶対に欲しいとか、1枚でお出かけできるワンピースも作りたいなとか、進めていくうちに、私自身が本当に着たいもの。そして季節を問わずどんな年代、体形の方にも着ていただけるようなアイテムが揃っていきました」