個人年金保険は、一定期間の保険料を払い込むことで、契約時に定めた年齢(60歳や65歳など)から年金形式で保険金を受け取れる商品です。
一般的な保険商品は、万が一の事態に備えるための保障に重きを置いていますが、個人年金保険は将来を見据えた貯蓄ができることが特徴です。
一方、個人年金保険で受け取る年金(保険金)は課税される事があり、受取人が誰になるか(契約者本人または家族など)によって課税区分も異なります。
そこでこの記事では、個人年金保険で課税される税金の種類や計算方法について解説していきます。
個人年金保険を受け取るときにかかる税金
個人年金保険を受け取るときに発生する税金の種類は、次のとおりです。
個人年金保険にかかる税金の種類
契約者(保険料負担者)と保険金受取人が同じ場合は「所得税」
契約者(保険料負担者)と保険金受取人が違う場合は「贈与税」
また、個人年金保険の受取人が死亡した場合、受取人の区分によっては相続税が発生する場合もあります。
受取人が死亡した場合の税区分については「遺族が受け取る場合の税金は?」で解説するので、まずは「所得税」と「贈与税」について簡単に解説します。
契約者(保険料負担者)と保険金受取人が同じ場合は「所得税」
契約者と保険金の受取人が同じ場合、個人年金保険によって増えた資産は収入としてみなされ、所得税の課税対象となります。
個人年金保険の年金は「一括受け取り」と「年金受け取り」の2種類から選択でき、受け取り方によって区分に違いがあります。
個人年金保険の受け取り方による所得の種類
一括受け取りの場合:一時所得
年金受け取りの場合:雑所得
受け取り方が違うことで、税額の計算方法や控除の有無などが異なります。
詳細については「個人年金保険の受取額にかかる税金の計算シミュレーション」の項目で解説します。
契約者(保険料負担者)と保険金受取人が違う場合は「贈与税」
配偶者や子供、親など、個人年金保険の契約者と保険金の受取人が違う場合、契約者から受取人に対して年金受給権が贈与されたものとみなされ、贈与税の課税対象となります。
また、個人年金保険の受け取りが開始された1年目は贈与税が発生し、2年目以降は贈与された年金受給権によって受取人が収入を得ることになるため、以降は所得税(雑所得)が発生します。
一般的に、所得税よりも贈与税のほうが多くの税金を支払うケースがあるため、個人年金保険の契約者と受取人は同一にしておくのがおすすめです。
贈与税についても「個人年金保険の受取額にかかる税金の計算シミュレーション」でわかりやすく解説します。
個人年金保険とは? 種類やメリット・デメリットを簡単に解説します
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個人年金を契約する、受け取る際のポイント
個人年金保険を契約する、受け取る際は次の2つを意識しましょう。
個人年金を受け取る際の2つのポイント
一括受け取りか、年金受け取りのどちらか判断する
契約者(保険料負担者)と受取人を同一にする
1. 一括受け取りか、年金受け取りのどちらか判断する
個人年金保険は、「一括受け取り」または「年金受け取り」のどちらかを選べます。
どちらの受け取り方を選んでも所得税の対象になりますが、所得税のなかでも受け取り方に応じて課税区分が異なり、税額の計算方法や控除の有無に違いがあります。
※総収入額=基本年金 + 増額年金 + 年金受け取り開始後の配当金による増加年金の総合計
※必要経費=その年の年金受取額 × 払込保険料総額 ÷ 年金の総支給見込額
これらの式では、税額を計算する際のベースとなる「課税所得」を計算できます。
課税所得に対して所得税の税率を乗じることで、個人年金保険を受け取ったときの納税額が計算可能です。
一括受け取り(一時所得)のほうが控除額が大きいですが、受け取れる保険金の総額は年金受け取りを選んだほうが多くなります。
ただし、個人年金保険以外にも所得がある場合、それらも合算して所得税の計算が行われるため、どちらのほうが合っているかは受取人の所得状況などによって変わってきます。
2. 契約者(保険料負担者)と受取人を同一にする
個人年金保険の税負担を抑えるためには、契約者と保険金の受取人を同一にするのがおすすめです。
契約者と受取人が同一の場合は「所得税」、異なる場合は「贈与税」がかかりますが、一般的に所得税よりも贈与税のほうが税負担は重くなりがちです。
贈与税には年間110万円の基礎控除が設けられていますが、年金受給権の評価額が110万円を超えると贈与税が課税されます。