マンションや都心部の個人宅では、機械式駐車場を見かけることがあります。
マンション経営を始める際に駐車場について考え、機械式駐車場を検討している方もいるでしょう。
機械式駐車場と一括りにされますが、ピット式駐車場や地上二段式駐車場など様々な種類があります。
駐車場を整備する前にどのような種類があるのかも把握しておかなければいけません。
そこで今回は、機械式駐車場の種類や耐用年数、メリット・デメリット、トラブル事例、トラブルへの対応策について解説していきます。
さらに、平面駐車場や自走式立体駐車場についても解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

マンションの駐車場選び…「機械式駐車場」とは?

まずは、マンションの駐車場選びで候補に挙がりやすい機械式駐車場の概要や種類、耐用年数からみていきましょう。

機械式駐車場とは

機械式駐車場は、「パレット」と呼ばれるスペースに車を載せ、機械の動力によって上下に移動させて立体的に収容する駐車場です。
大型の商業施設や都心部のマンションで採用されているケースが多いです。
個人宅では小型の機械式駐車場を取り入れている場合もあります。

機械式駐車場には種類がある!

機械式駐車場には、ピット式駐車場、地上二段式駐車場、パズル式駐車場、タワー式駐車場、垂直循環方式駐車場といった種類があることも把握しておく必要があります。
それぞれの特徴は以下のとおりです。

ピット二段式駐車場

ピット二段式駐車場は、上下二段に車を停められます。
このタイプの駐車場は、下段の車を移動させることなく上段の車を動かせるというメリットがあります。
しかし、下段は地下に収容されるという仕組みになっているので、地上からは上段の1台だけしか出せません。
下段に停めた車を出したい時は、機械を動かして地上の位置まで動かさなければいけないのです。
ピットに深さによっては、二段ではなく三段になっている場合もあります。
土地がそこまで広くない場所で駐車スペースを確保しようと考えた時におすすめです。

地上二段式駐車場

地上二段式駐車場は、地上に車を停められるタイプです。
ピット二段式と同じように上下に2台の車を駐車できます。
個人宅に機械式駐車場を設置する場合は、このタイプを採用するケースが多く見られます。
工事はそこまで難しくなくコストも抑えられるため、個人宅でも取り入れやすい駐車場です。
連棟も可能となっているので、業務用として利用されることもあります。

パズル式駐車場

パズル式駐車場は、昇降横行式とも呼ばれている駐車場です。
車1台分のスペースがあれば設置できる点が、このタイプならではの大きな特徴です。
車を載せるパレットをまるでパズルのように上下左右に動かすことによって、車を指定の位置まで移動させるという仕組みになっています。
上下左右だけではなく前後に動くタイプやピット式と併用することで地下にも駐車できるタイプもあるため、どれが適しているか吟味するようにしましょう。
車を駐車場から出す時は、操作盤で車を停めているスペースの番号を押すだけなので、少々時間はかかってしまいますが手間はかかりません。

エレベーター式駐車場

エレベーター式駐車場は、車を停めておく駐車室と、車を駐車室まで移動させるための自動車昇降装置を組み合わせたタイプです。
立体的に車を収容するため、タワーパーキングと呼ばれる場合もあります。
この駐車場には、縦式・横式・旋回式の3種類があることも念頭に置いておきましょう。
縦式は、昇降装置の前後に駐車室が設けられています。
横式は左右に駐車室があるタイプ、旋回式は放射状に駐車室があるタイプです。
稼働時の音が少なめという点も、エレベーター式駐車場の特徴になります。

垂直循環式駐車場

垂直循環式駐車場は、高層タイプの大型駐車場です。
エレベーター方式と同じく見た目がタワーのようになっているので、タワーパーキングと呼ばれることがあります。
タワーの中で観覧車のように車を載せたパレットが循環するという仕組みです。
マンションや大型の商業施設では、このタイプを採用しているケースが多く見られます。

機械式駐車場の耐用年数

機械式駐車場の法定耐用年数は15年です。
定期的なメンテナンスを行っている場合に限りますが、15年程度が目安だと考えておきましょう。
メンテナンスに関しては、建築基準法第8条「維持保全」と国土交通省が発表した「機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン」で定められています。
その内容は、機械式駐車場の所有者・管理者が安全な状態を維持や使用のために1~3ヶ月に1回程度のスパンでメンテナンスを行うというものです。
機械式駐車場には前述したようにいくつもの種類があり、使用状況や立地条件なども一律ではありません。
そのため、耐用年数は15年と言い切ることはできないでしょう。
ただし、雑に使われていたりメンテナンスを怠っていたりすると、15年を待たずに寿命を迎える可能性があります。

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機械式駐車場におけるメリット

マンションで機械式駐車場を採用するケースが多いのは、入居者にとってもメリットがあるためです。
メリットが多い物件だと感じてもらえれば入居者を確保しやすくなるので、必然的に大家さんにとってのメリットにもつながります。
続いては、機械式駐車場が設置されたマンションで暮らす住民や大家さんが享受できるメリットについて解説しましょう。

入居者同士のトラブルを防げる

機械式駐車場は、隣の車にドアを開けた時にぶつけてしまったり、駐車スペースからはみ出すことによって言い争いになったりするなどのトラブルを防げます。
また、自走式立体駐車場や平置き駐車場だと、事故が起こることも考えられます。
駐車場内で起こった事故は大家さんに連絡が行き、処理を頼まれることもあるでしょう。
事故処理は面倒な部分も多いため、できれば避けたい事態です。
入居者同士のトラブルをできるだけ回避するためにも、機械式駐車場をマンションで採用するのは一理あると言えます。

車上荒らしやいたずらといったリスクを防げる

車上荒らしやいたずらなどのリスクを防げることも、機械式駐車場ならではのメリットです。
機械式駐車場は車を出し入れする時に専用の鍵などが必要となります。
そのため、屋外の駐車場に比べると車上荒らしやいたずらなどのリスクを大幅に軽減することも可能です。
ピット二段式の地下やエレベーター式・垂直循環式の駐車室は、人目に触れにくくなります。
見える場所に置いてある車よりもいたずらはしにくいので、被害に遭う可能性は格段に低くなるでしょう。
安全な場所に車を停めておけるとなれば、安心して入居できると感じる人も多くなり、入居率の維持につながります。

車へのダメージを減らせる

駐車室や地下に車を停めておけるため、日焼けによるボディの色褪せや雨・雪による汚れの軽減にもつながります。
車を大切にしている人ほど、ちょっとした汚れなどが気になってしまうものです。
そのため、車をダメージから守れるような設備が整ったマンションは魅力的に見えるはずです。
マイカーを持っている人は少しでも車を長持ちさせたいと考えているので、機械式駐車場を完備した物件への入居を希望する人は多いでしょう。

省スペースでも設置可能

タワーパーキングを含む機械式駐車場は、省スペースで駐車場を確保できます。
1フロアに4台駐車できるタイプであれば、3段にすると12台の駐車が可能になります。
運転して移動させる必要もないため、車路やスロープも設置する必要がありません。
マンションの一角など、限られたスペースでも問題なく設置できます。
狭いスペースでもある程度の駐車台数を実現できることから、入居者が多くなるマンションで採用されるケースが多いです。