こんなはずでは…年金月27万円、貯蓄4,000万円の63歳男性“余裕の老後”が一転、“破産の危機”に陥ったワケ【FPが解説】

「新NISA」が話題だが…運用した場合の“上手な取り崩し方”

1月から新NISAが始まったということもあり、ますます投資に注目が集まっています。しかし、「みんなやっているから」と目的を決めず、なんとなく始めてしまったという人も多いのではないでしょうか。

もしそうであれば、まずはなんのために投資を行うのか、目的を決めましょう。老後資金のため、マイホーム購入のため、子どもの教育のため、欲しいものを手に入れるため……なんでも構いません。

目的によって投資すべき商品や方針も変わりますし、一括で取り崩すのか毎年少しずつ取り崩すのかなど、貯まったお金の「使い方」も変わってくるためです。

「定額」か「定率」か…少しずつ取り崩すならどっちがいい?

下記の[図表2]※は、65歳時点で3,000万円の金融資産があり、年率3.5%で運用しながら年間150万円の一定額を毎年取り崩していく場合(=定額で取り崩した場合)と、資産に対して毎年5%分を取り崩していく場合(=定率で取り崩した場合)を比較したものです。


[図表2]「定額取り崩し」と「定率取り崩し」、それぞれの資産推移 出所:筆者作成

※実際に運用する際は日々価格が変動するため上記のようにはなりませんが、一定に推移したと仮定して計算しています。

「定額」で取り崩す場合、金額が変わらないため生活水準を維持しやすいというメリットがあります。一方、資産が値下がりしたときも一定額を引き出すことになるため、資産の減少が加速させてしまう点には注意が必要です。

また、「定率」で取り崩す場合は、「毎年〇%」と資産に対して取り崩していく割合を決めるため、資産の変動によって毎年受け取ることのできる金額が変わります。たとえば「毎年5%」と決めたら、資産が値上がりしてもそのうちの5%、値下がりしてもそのうちの5%です。

[図表2]をみてもわかるように、変動に合わせて価格が変わる「定率」のほうが、定額で取り崩すより資産は枯渇しにくいです。

ただし、定率取り崩しの場合、残り資産に対して一定割合を取り崩すため、後半は受け取れる金額が少なくなってしまいます。

「定額」「定率」いずれの方法も、自分で決めて毎年取り崩す方法のほかに、証券会社等で受け取り方を設定できるところもあります。どちらが良いのかは老後のライフスタイルによりますが、うまく活用していく方法を考えていきましょう。

まとめ…資産形成の第1歩は「リタイアメントプランニング」

自分自身にあった資産形成の方法と資産の取り崩し方を考えるためにはまず、退職後の収支を予測し、それにあった資金計画を立てる「リタイアメントプランニング」を行うことが重要です。プランに基づき、適切な投資戦略や取り崩しのタイミングを考えましょう。

また、リタイアメントプランニングを行ったあともそれで終わりではなく、社会や市場、実生活の変化に応じて計画を柔軟に調整することも大切です。

なお、リタイアメントプランニングはご自身で作成することもできますが、ファイナンシャルプランナーをはじめとする専門家に相談しながら、一緒に作成することをおすすめします。

老後の資金計画は早めに立て、「人生100年時代」の老後生活を充実させましょう。