「給料」と「給与」の違い、「額面」と「手取り」の違い、あなたはすぐに分かりますか? それぞれの言葉で指す金額も変わります。意外と間違いやすい言葉の意味と、給与から控除されている税金や保険料についても解説します。給与明細を手元に置いてお読みください。

1.給料と給与の違いとは 

毎月25日が支給日という人が多いと思いますが、この話をするときに「給料」という人もいれば、「給与」という人もいるでしょう。どちらも同じ意味合いと捉えられている傾向にありますが、それぞれ厳密には意味合いが違います。

・給料 各種手当や残業代などを除いたものです。よって、正規勤務時間で働いた際の支給額です。基本給ともいいます。

・給与 家族手当などの各種手当や残業代なども含め、毎月会社から支給される総額を指します。私たちが日ごろ話をするときには、この「給与」のケースが多いと思います。

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2.額面と手取りとは?税金や保険料など何が控除されているか


お財布にお金を入れる
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働いてもらえる給与のうち、手取りはできるだけ多い方が…。というのが正直なところですが、社員やパートなど一定の収入がある人は、何かと差し引かれるものがあり、総支給額(額面)より手取りが少なくなるのが一般的です。

特に就活中の学生にとっては採用や求人情報の「給与〇万円、賞与は給与の何カ月分」といった表記に胸躍らせることもあると思います。アルバイトと比べ1年間で見るとかなり多くもらえそうですが、これはあくまで額面であって、手取りにするとどうなるでしょうか?額面と手取りがどれだけ違うのか?以下で具体的に見ていきましょう。

2-1 額面から主に「税金」と「社会保険料」が差し引かれて手取りになる

前述したように、基本給にさまざまな手当などが加わったものが給与であり、額面ともいいます。額面から控除される主なものは「税金」と「社会保険料」です。税金は所得税が月収に応じて一定額源泉徴収されることとなります。

「前年」の所得に対して住民税も原則源泉徴収されます。前年がベースであるため、入社1年目のときは差し引かれません。言い換えれば、入社2年目から住民税も徴収されるようになるため、もし1年目と2年目の給与が変わらない場合は2年目の方が手取りが少ないということになります。これには注意してください。

また、厚生年金や健康保険といった社会保険料も給与から控除されます。主にこういったものが額面から差し引かれ、手取りとなります。

それ以外にも手取り額に影響を与えるものはいくつもあります。上場企業など一定規模の会社などでよく見られるのが「会社の持ち株制度」。毎月指定金額を給与から徴収し、会社の株式を買い付けていくことになります。さらには、生命保険契約を団体契約として給料から天引きにしている場合もあります。

強制的に貯蓄ができる財形貯蓄制度を始める人もいるでしょう。よって、手取りが少ないけど、将来への貯蓄がしっかりできている人も多くいます。逆もまた同じです。このように手取りに影響するものはさまざまです。他の人と手取りで比較して、安心したり不安に感じたりする必要はありませんよ。

2-2 控除されるものの種類

個人差がありますが、共通する点は「社会保険料」と「税金」です。ここでは控除されるものの種類と計算方法、具体的な仕組みについて紹介します。

・厚生年金保険料
 毎月の給与から算出される「標準報酬月額」に対して18.3%が保険料となります。この率を労使折半、つまり会社と個人で半分ずつ負担することになるため、従業員負担分はおよそ報酬の9%となり、その分が控除されます。計算のベースとなる標準報酬月額は4月~6月の報酬月額の平均となります。

この3カ月分のデータを7月に届け出、その年の9月から翌年8月まで、原則、毎月同額の保険料が徴収されることになります。よって「4月から6月まではあまり残業をしない方がよい」などといわれるのはそのためです。ただし、昇給等で大幅に報酬額が変更となった場合は「随時改定」という手続きがあり、年の途中でも保険料が変更となる場合があります。

・健康保険料(介護保険料)
 健康保険料も厚生年金と同じように標準報酬月額に対して一定率が控除されることになります。大手企業やグループ会社、業界団体などに健康保険組合がある場合は、各組合の規定に定められる負担割合となります。

一方、各都道府県の協会けんぽに加入している場合は以下のようになります。17等級を赤で囲んでいますが、月額19万5000円~21万円の場合、標準報酬月額が20万円とみなされ、表に記載されている折半額が差し引かれることになります。なお、40歳以上は「介護保険第2号被保険者」に該当するため、介護保険料分も上乗せされます。

<福岡県の場合 平成31年4月分(5月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表>

参照サイト/https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/h31/ippan4gatsu_2/h31040240fukuoka.pdf

・雇用保険料
失業した際の失業手当や育児休業手当、傷病手当など、長期にわたり勤務できないときのために雇用保険があり、この保険料も毎月の給与から控除されています。業種によって異なりますが、原則、従業員負担分は0.3%(2019年度)と社会保険料の中ではそれほど大きな負担ではありません。

・所得税
 国税庁の定める源泉徴収票額に従って源泉徴収されます。所得と扶養家族の人数によって徴収額は決まりますが、所得が多ければ多いほど、徴収される所得税は多くなります。なお原則、月額8万8000円未満の場合は源泉徴収されません。

・住民税
 前年の課税所得を基に一律10%が住民税となります。課税所得とは給与所得控除後の総所得に対して、医療費控除や配偶者控除といった各種所得控除も差し引いた後の金額です。前年分の住民税を6月~翌5月の1年間に分けて徴収されます。

2-4 給与とボーナスでは控除されるものが違う

ボーナスの場合も支給額に応じて所得税が源泉徴収されることになりますが、住民税は前年の所得に応じて毎月の給与から徴収されるのが原則であるため、ボーナスから控除されることはありません。その点が大きな違いです。

では社会保険はどうでしょうか?2003年度に「総報酬制」という制度が導入されて以降、原則、給与と同様に厚生年金や健康保険が徴収されます。社会保険料の「標準報酬」に基づいて計算します。若干、給与と賞与(ボーナス)では計算する過程で細かい違いはありますが、例えば20万円の月額報酬と20万円の賞与に対して差し引かれる厚生年金と健康保険料は、結果、同程度となります。ただし、加入している健康保険組合や国民健康保険組合によっては賞与時の扱いが異なります。