「ラブandベリー」の衝撃
当時のプリキュアを最も苦しめたもの。
それはセガが展開していた女の子向けアーケードカードゲーム「おしゃれ魔女 ラブandベリー」(以下ラブベリ)の大旋風でした。
カードを選び、オシャレをしてダンス遊びをするという「女の子の大好き」がギュっと詰まったこのゲーム。アミューズメント施設には多くの女の子が行列を作り、各地で開かれる大会にはたくさんの女児が集まり大盛況となりました。
最終的にはカード出荷枚数が2億6000万枚を超える大ヒットコンテンツとなっていたのです。
プリキュアの生みの親である鷲尾天プロデューサーも「ダントツの人気」だったと評しています。
鷲尾「その中でも「ラブandベリー」は「ふたりはプリキュア」放送開始から約半年後の二〇〇四年十月からスタートして、あっという間に情報番組やニュースにとりあげられるくらいダントツの人気になりました。女の子のニーズをよくとらえていたし、非常によくできていたと思います。
『プリキュア シンドローム!<プリキュア5>の魂を生んだ25人』(P75、幻冬舎)
ラブベリのブームは前作マックスハートのときに到来し、「S☆S」のときには絶頂期となっていました。
このラブベリの大ヒットにより、女児向けホビーの中心がテレビアニメの「ごっこ遊び」からアーケードカードゲームへと急速に移り始めるのです。
家庭で子どもに使用する金額は一定である以上、それまで女の子向けNo.1コンテンツであったプリキュアが大きく影響を受けることとなりました。
誕生日やクリスマスなどで子どもがプレゼントを買ってもらうときは、どうしてもそのときの「1番」が選ばれるため、2番手になってしまった「S☆S」のアイテムが選ばれにくくなったのです。
さらに当時は「きらりん☆レボリューション」の躍進、携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」の大ヒットなど、子ども向けコンテンツの選択肢が急速に増えていた時代でもありました。
「S☆S」は、こうした女児向けホビーの主役が変わる転換期の真っただ中で放送されていた作品だったのです。
子ども人気を裏付けるデータ
しかし、決して「S☆S」は子どもに人気がなかったわけではないのです。
それを裏付けるものとして、バンダイがかつて行っていた「お子さまの好きなキャラクターに関する意識調査」のアンケート結果があります。
「S☆S」の放送年である2006年も3~5歳女子で「1位」を維持しています。
つまり当時の子どもの中でもプリキュアは「No.1の好きなキャラクター」だったのです。
言い換えれば、「スプラッシュスターは好きなアニメのNo.1だけど、今一番遊びたいのはラブベリ(カードゲーム)」という現象が起きていたのだと思われます。
子どもたちは決してプリキュアを見なくなっていたのではありません。
「S☆S」の売り上げの苦戦は「人気の低下」ではなく「消費行動の変化」によるものだったといえるのではないでしょうか。

