マスクのゴムひもの圧迫が長時間続くと、耳周辺の筋肉の緊張を引き起こします。それが頭のコリや緊張型頭痛も誘発するのです。その改善のためにお勧めしたいのが、耳の上端にある「角孫」というツボの刺激と、耳ほぐしマッサージです。顔のリフトアップや老け顔解消にも役立ちます。【解説】西野章子(治療室キノワ・鍼灸師)

解説者のプロフィール

西野章子(にしの・あきこ)

治療室キノワ・鍼灸師。京都府出身。明治鍼灸大学(現:明治国際医療大学)鍼灸学科卒業。卒業後、美容鍼、肩こり、腰痛、不妊治療などの研鑽を積む。現在は自身の妊娠、出産の経験を基にしたアドバイスや、更年期障害等への取り組みなど、女性の治療だけでなく、美容に対する知識や技術を深め、多くの女性をサポートしている。
▼治療室キノワ

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長時間のマスク着用が引き起こす不調

耳を引っ張るわずかな力が頭のコリや痛みを招く

新型コロナウイルスの影響で、私たちはもはやマスクなしでの外出というのは考えられない状況になっています。外出中はマスクをずっとつけ続けていることになり、その弊害も生じています。

私たちの治療院では、コロナ禍以降、ヘッドマッサージを求める患者さんが増えました。頭のコリに悩まされる人が多くなったといい換えることもできるでしょう。これも、マスクの影響があると考えられます。さて、マスクは、どんな影響を私たちの体に及ぼしているのでしょうか。

第一に、マスクを装着することで、ゴムひもが耳を圧迫する点が挙げられます。

ゴムひもが耳にかかると、多くの場合、耳が前方に引っ張られます。耳の形によっては下方に引っ張られる人もいるでしょう。ひもで引っ張られるのは、ごくわずかな力に過ぎなくても、それが長時間続くことで、負荷が蓄積し、耳周辺の筋肉の緊張を引き起こすのです。

耳の周辺には、咬筋や側頭筋、胸鎖乳突筋など、多くの筋肉があり、それらがこわばってきます。先述したヘッドマッサージを求める患者さんたちの場合、主に側頭筋がこわばっていて、それが頭のコリとして自覚されるのでしょう。

側頭筋に加えて、耳周辺の筋肉群や、首や肩の筋肉が緊張することで、頭が締めつけられるように痛む緊張型頭痛も誘発されます。緊張型頭痛に悩む患者さんが当院を訪れることも、以前より増えています。これも、マスクの影響は小さくないと思います。

熱がこもって顔の温度が上昇

第二に、マスクをしていると、熱がこもって、顔の温度が上がることが挙げられます。

温度アップによって、頭の血管が拡張するため、夏場は特に危険です。寒い季節であっても、気温の高い室内で長時間マスクをつけていれば、影響が出てくるでしょう。

それだけではありません。マスクなしのときと比べると、マスクで呼吸が制限されるため、酸素不足になりがちです。酸素をより多く運ぶため、これも脳の血管の拡張を招きます。

この二つが原因となって、脳血管の拡張が進み、それが偏頭痛を引き起こすことにつながるのです。

表情筋がどんどん衰える

第三に、これは直接、耳とは関係ありませんが、いつもマスクをしていることで、表情を人に見せる機会が極端に少なくなったことが挙げられます。

もちろん、喜怒哀楽などの感情の動きがあれば、マスクをしていても、顔の表情はある程度は変わります。それでもマスクをしていると、感情や思考の動きに合わせた顔の動きはずいぶんと少なくなっているでしょう。

マスクをしていなかったこれまでと比べると、表情筋を動かすことが極端に少なくなっています。筋肉は使われなければ、如実に衰えます。

つまり、表情筋を使わないために、表情筋がどんどん衰えて、老化が進んでしまうおそれがあるのです。マスクは、老け顔になるおそれを高めているといっても過言ではありません。