排便時のいきみ過ぎでガスが出なくなることも

上の①以外で、腸にガスがたまる理由としては、次の4つが考えられます。

ガス(空気)の入る量が多い場合

ガス腹のガスの大半は、食事などの際に飲み込んだ空気です。飲み込む空気の量が多ければ、それだけ腸内のガスの量も増えます。

ガスを肛門までうまく運べない場合

運動不足や加齢の影響、自律神経(内臓や血管の働きを調整する神経)の乱れなどで蠕動(腸が内容物を肛門のほうへ送る動き)が悪くなると、腸の内容物が肛門へうまく運ばれず、便秘になりがちです。この状態ではガスも肛門まで運ばれず、腸内に滞りやすくなります。

また、女性の場合、生理の直前に便秘が解消する、あるいは便秘になるという方が少なくありません。閉経後の女性に便秘が増えることも確認されています。これらの点から、女性ホルモンのバランスの乱れが腸の運動機能やガス腹と関連する可能性も考えられます。

腸内で余分なガスが発生する場合

いわゆる悪玉菌は、たんぱく質などを分解して硫黄系のガスを発生させます。豆類やイモ類などを食べ過ぎたときも、ガスが発生しやすくなるといわれています。

さらに、SIBO(小腸内細菌増殖症)という病気で小腸にガスがたまるという説もあるようです。本来、小腸には腸内細菌はほとんど存在しません。しかし、何らかの理由で、小腸で腸内細菌が大量に増殖し、ガスを発生させるというのです。

ガスを肛門から出せない場合

直腸(大腸の末端にあり、肛門に一番近い部分)や肛門周辺の病気や異常が原因で、便やガスを排出しづらくなることもあります。

例えば「直腸重積」という病気。これは高齢者に多くみられるもので、直腸壁が内側に折り込まれて狭くなった状態をいいます。

直腸重積は、加齢の影響や排便時のいきみ過ぎで起こります。便が肛門へ近づくと、肛門は軽くいきむだけで反射的に開くようにできています。しかし、いきみ過ぎて余計な腹圧をかけると、加齢でゆるんだ直腸が上からの腹圧で押しつぶされて畳み込まれたようになってしまうのです。

直腸重積では、狭くなった直腸に無理に便が通ることで、周辺がむくんで、ますます直腸が狭くなります。それで便が思うように出なくなれば、排便時により強くいきむため、さらに状態が悪化するという悪循環に陥りがちです。

また、排便時に肛門の反射がうまく働かないために、便やガスが滞る場合もあります。

老化による衰えや出産時に肛門と接している骨盤底筋群の神経がダメージを受けると、肛門の反射がうまく働かなくなります。このような人は、いきめばいきむほど肛門が締まるため、便秘になりがちです。もちろん、ガスの排出もされづらくなるのです。

このように、ガス腹にはさまざまな原因が考えられます。

ガス腹は、大腸がんや直腸重積などの病気のサインである場合も少なくありません。食事や生活習慣などを変えてもガス腹が長く続くようであれば、かかりつけ医に相談をしてください。

ガス腹の原因として考えられるもの

腸閉塞
何らかの原因で腸の内部が狭くなったり腸がねじれたりして、肛門へ向かう腸の内容物(便)の流れが妨げられた状態。腸の内容物だけでなくガスも詰まる。

腸閉塞以外
ガス(空気)の入る量が多い
食事などの際に飲み込んだ空気の量が多くて起こる。
ガスを肛門までうまく運べない
運動不足や加齢の影響などで、腸の運動機能が悪くなって起こる。
腸内で余分なガスが発生する
いわゆる悪玉菌の働きや、イモ類の食べ過ぎなどで起こる。
ガスを肛門から出せない
直腸や肛門周辺の病気や異常などが原因で起こる。

※食事や生活習慣などを変えてもガス腹が長く続くようであれば、かかりつけ医に相談しましょう。

この記事は『安心』2022年4月号に掲載されています。

画像参照:https://www.makino-g.jp/book/b601538.html