活性酸素が体に与えるダメージを「酸化ストレス」と呼びますが、腎臓病は酸化ストレスと深く関係しています。そのため、それを除くコーヒーポリフェノールが、よい影響を与えている可能性があります。カリウムや水分制限がなければ、腎臓病の人でも安心してコーヒーを飲むことができます。【解説】森維久郎(赤羽もり内科・腎臓内科院長)

解説者のプロフィール

森維久郎(もり・いくろう)

赤羽もり内科・腎臓内科院長。腎臓内科医。三重大学医学部医学科卒業。東京医療センター研修医、千葉東病院腎臓内科・糖尿病内科、東京北医療センター総合内科/腎臓内科、ふくだ内科を経て、2020年5月に「赤羽もり内科・腎臓内科」を開業。人工透析予防や生活習慣病の予防を目指し、診療を行っている。webサイト「腎臓内科.com」で、腎臓病の情報を積極的に発信中。
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コーヒーは腎臓にいい?悪い?

悪影響があるという報告はほとんどない

コーヒーというと、以前は、一般的に「体に悪い」というイメージが強かったようです。しかし最近では、いろいろな面で健康づくりに役立つという研究報告が出てきています。

そこで、私の専門である「腎臓」を中心に、健康とコーヒーの関係について、現在わかっている範囲でご紹介しましょう。

まず、まだ腎臓病になっていない健常な人については、ある程度多くのコーヒーを飲んでいる人の方が、慢性腎臓病(CKD)を発症するリスクが低いという研究報告があります。

慢性腎臓病の人に関しても、コーヒーなどでカフェインをとっている人の方が、死亡率が低いと報告されています。

それとは別に、「コーヒーは体によい可能性があり、1日1杯より2杯、2杯より3杯、3杯より4杯以上飲む人の方が、心筋梗塞・脳卒中や糖尿病、腎臓病などによる死亡率が低い」という報告もあります。

コーヒーの杯数に関しては、「1日2〜4杯飲んだ人は、コーヒーを飲まなかった人と比べて死亡リスクが低くなった」という報告や、「日本人でコーヒーを1日3杯以上飲む人は、脳腫瘍の発症リスクが低い」などの報告もあります。

ただし、こうしたコーヒーの働きが、どんなメカニズムで得られるかについては、今のところ、よくわかっていません。

可能性としては、コーヒーに含まれるカフェインやポリフェノールが、何らかの形で役立っていることが考えられます。

ポリフェノールは、赤ワインに多いことで有名になった成分で、体内で老化や病気を進める活性酸素を除去する「抗酸化作用」を発揮することが知られています。

コーヒーには、「コーヒーポリフェノール」と総称されるポリフェノールの仲間(クロロゲン酸など)が多く含まれ、その量は赤ワインに匹敵するといわれています。

活性酸素が体に与えるダメージを「酸化ストレス」と呼びますが、腎臓病は酸化ストレスと深く関係しています。そのため、それを除くコーヒーポリフェノールが、よい影響を与えている可能性があります。

また、コーヒーは血糖値の改善に役立つとも報告されています。糖尿病が悪化して血糖値の高い状態が続くと、慢性腎臓病の一種である、糖尿病性腎症を起こす危険性が高まります。それを防ぐ一助としても、コーヒーが役立つ可能性があります。

以上の他、コーヒーには血流をよくする作用もあるといわれています。そのことも、腎臓によい影響を与えている可能性があるでしょう。

一方で、コーヒーが腎臓に悪い影響を与えるという報告は、ほとんど見当たりません。これらの研究結果を踏まえると、少なくとも腎臓を気にして、コーヒーを我慢する必要はないでしょう。

コーヒーが好きな人なら、楽しんで適量を飲んでいただければよく、それが腎臓の健康維持に役立つことも期待できます。