土砂崩れ(がけ崩れ)は火災保険で補償される? 土砂災害時の考え方まとめ

土砂崩れ(がけ崩れ)を経験したことがある人は少ないと思いますが、ニュースなどで目にしたことがある人は多いでしょう。

実際に被害者になると、家が倒壊することは当たり前として、人命に影響を及ぼす可能性もありますので、とても怖い事故です。

土砂崩れの原因は、一般的に大雨と地震と言われております。地震は突発的に起きますが、大雨はある程度事前に予測を立てることができます。

崖の近くに住んでいる人は、ニュースなどをチェックし、土砂崩れが起きる可能性がある際には、地方自治体の指示に基づいて避難することが命を守る方法でしょう。

一方で、土砂崩れが起きたら、自宅の被害は防ぎようがありません。

しかし、火災保険に入るなどして、リスクを移転できるようにすれば、金銭的な問題は解決できるでしょう。

今回は土砂崩れが起きる原因、火災保険の適用から請求方法までを丁寧にまとめましたので、多くの方に読んでいただければ幸いです。

土砂災害の平均発生件数は、年間1,319件(令和2年度)

令和2年は全国46都道府県で1,319件の土砂災害が発生しており、平均発生件数の約1.2倍の数字となっています。

特に令和2年7月豪雨の影響が大きく、37府県で961件の土砂災害があり、過去最大クラスの広域災害となっています。

令和2年7月豪雨で最も被害が大きかったのは熊本県で、年間では227件もの土砂災害被害を記録しています。

この数字は他県と比較すると突出して高い数字です。

熊本県にお住まいの人は、土砂崩れは身近にある怖い事故として認識している人も多いことでしょう。

また、意外に思われるかもしれませんが、宮城県では令和2年は土砂災害の発生件数が0件で、被害が全くなかったことになります。

東日本大地震以降、災害対策に県として取り組んでいる姿勢がこのような結果につながったのかもしれません。

(広告の後にも続きます)

土砂崩れ(がけ崩れ)は、火災保険と地震保険で備える

土砂崩れは、ひとりの人間が防ぐことができる事故ではありません。

そう考えると、火災保険と地震保険に入ることで、金銭的な損害に備えることが重要となります。

土砂崩れの原因は大雨や地震ですが、火災保険のみでは地震による土砂崩れの補償を受けることができませんので、やはり火災保険と地震保険がセットで必要と言えるでしょう。

大雨・洪水による土砂崩れは火災保険の水災補償

大雨・洪水による土砂崩れは、火災保険の基本補償のなかでも、「水災」という項目で補償することができます。

ただし、この「水災」の補償は外すこともできるので、補償されていない火災保険に加入している人も一定数います。

今一度、ご自身の火災保険に水災が含まれているか保険証券を確認しましょう。

保険証券が無ければ、一旦は契約した保険代理店または保険会社に電話で問い合わせしましょう。

昨今、火災保険料が上昇しているなかで保険料の削減の一環として、水災を外して契約している人もいます。

水災は火災保険の補償項目の中でも地域によって異なりますが、保険料が高く、水災の補償を外すことで保険料の削減効果は大きいケースがあります。

水災の補償が無ければ、土砂崩れの被害を受けても一切補償を受けることができませんので、注意しましょう。

水災補償の支払い基準

水災補償の支払い基準は、床上浸水の被害があるか無いかで決まる場合が多いです。

床上浸水の定義として、保険会社の約款では一般的に下記記載がされています。

床上浸水の定義

居住の用に供する部分の床を超える浸水または地盤面より45cmを超える浸水

参照:損害保険ジャパン株式会社 火災保険のパンフレット(P.17)

分かりやすくお伝えしますと、部屋の床まで水が入り込まないと補償されませんということです。

ここで疑問に感じる人もいると思いますが、床上浸水しない水災事故というのは実際にあるのでしょうか。

一般的な木造住宅では床下の湿気を防ぐための通気口が床下にあり、そこから雨水が侵入し土砂や廃棄物が流れ込むという被害が実際に起きています。

事故が起きてしまうと、床を剥がして修理が必要なため、多額の修理費用が発生しますが、床下浸水は水災とはならないため補償をしてもらえません。

昨今、地球温暖化で降水量が増えていることで水災の被害数も上昇傾向にあります。

特に一戸建てにお住まいの人は自宅の床下がどのような設計になっているのか、しっかりと確認をしておく必要があるでしょう。

火災保険に水災補償は必要? 補償を受けられる条件や金額などを解説します

地震・火山噴火による土砂崩れは地震保険の補償範囲

火災保険では地震を原因とした事故は全て対象外としています。

そのため、よく間違えられるのは地震による火災です。

火災が起きれば、火災保険が対象になると勘違いしている人が多いですが、原因が地震であれば一切の補償を受けることができないのです。

さらに、地震保険は火災保険とセットでないと加入することができません。

理由としては、地震保険に関する法律の第二条に「特定の損害保険契約に附帯して締結されること。」と明記されているためです。

また、地震保険は火災保険金額(補償の限度額のこと)の30%から50%以内で契約する仕組みになっています。

地震保険は保険会社にとっても非常にリスクの高い保険であり、地震があると多くの加入者に請求の可能性があることから、一定の限度額を設けて、請求が過大にならないようにしているのです。

なお、地震保険は国との共同保険になっており、公共性が高いことから保険料は全ての保険会社で一律となっております。

ただし、地震保険料の割引制度として、建築年割引(建築年月:1981年6月1日の建物が対象)というものがありますが、建築年割引の適用には建物の謄本などの建築年月を証明する資料が必要なため、適用されていないケースも散見されます。

1981 年6月1日以降の建物に住まれていて、地震保険に加入している人は、建築年割引が適用されているか確認をしてみると良いでしょう。

地震保険は必要ある?補償内容や保険料の相場、選び方などをわかりやすく解説