遺言執行者(遺言執行人)とは?役割や権限や資格等、わかりやすく解説

法的な効力がある遺言書は、円滑な相続とトラブルの回避に役立ちますが、遺言書の作成だけではスムーズに相続が進まないケースもあります。本記事では、遺言執行者の概要と必要性、具体的な業務内容、選任するメリット・デメリットを解説します。

遺言書の写しを送付

遺言執行者は、全ての相続人に対して、遺言の内容を通知するため、遺言書のコピーを送付します。上述したように、遺言執行者就任通知書に同封して送付すると、スムーズでしょう。なお、相続人に遺言の内容を知らせることは、民法1007条第2項で義務付けられています。そのため、遺言執行者への就任を承諾したら、速やかに遺言書の写しを送付するようにしましょう。

(広告の後にも続きます)

相続財産目録を作成・交付

相続財産目録とは、対象となる相続財産をわかりやすく整理した文書です。対象が不動産であれば、所在地や物件の種類、構造などを細かく明記します。預貯金の場合には、金融機関名や支店名、口座番号等の記載が必要です。

なお、相続の対象となるのは、現金や不動産、預貯金だけではありません。債務も相続財産に含まれることがあるため、目録には債務も記載します。正確な目録の作成のために、しっかりと財産の調査を行うなどして、相続時点の財産の状態を正しく把握しておくとよいでしょう。

【あわせて読みたい】相続で重要な「財産目録」とは?主な目的や書き方などを解説

金融機関の解約手続き

遺言執行者には、遺言書に解約権限等を与える旨を記載することで、遺言者名義の口座の解約手続きを行う権限も与えられます。解約手続きにおいては、金融機関によって必要な書類は異なりますが、相続手続依頼書や被相続人の除籍謄本、対象口座の通帳やキャッシュカード、遺言書などが必要となります。

相続財産の登記

相続法の改正に伴い、現在では一定の場合には不動産の登記手続きを遺言執行者が行えるようになっています。例えば、被相続人の特定の不動産が、相続人の一人に遺贈された場合、遺言執行者は登記に関する手続きを実行することができます。登記の変更により、相続した不動産の所有権が相続人に移れば、受け継いだ財産を有効に活用できます。

【あわせて読みたい】【義務化】「相続登記」とは?不動産の相続に必要な手続きや費用について

財産の名義変更

相続財産の名義変更も遺言執行者が担う業務のひとつです。名義のある相続財産とは、自動車や有価証券、株式などが該当します。自動車の名義変更は陸運局で行います。株式や有価証券の名義を変更する際には、証券会社や信託銀行へ問い合わせたうえで必要な書類を入手すれば手続きは行えますが、移管する口座を新たに開設しなければならないなど時間を要するでしょう。

【あわせて読みたい】車の名義変更の費用はいくら?車の名義変更に必要な手続き、必要な費用を解説

【あわせて読みたい】家の名義変更は自分でできる?依頼した場合の費用や手続きの流れなどを解説

その他、遺言書に記載のある業務

上記以外の要望を遺言書に記載することも可能です。遺言執行者は、遺言の内容を実現するために存在します。そのため、遺言事由の範囲内であれば、具体的な要望を明記しておけば遺言執行者により業務として実行されます。

任務完了後に文書で報告

業務がすべて終了したら、遺言執行者は相続人に対して速やかにその旨を報告しなければなりません。当該報告に関する文書に記載される内容には、遺言執行に係る業務の内容、手続きを実行した日付や業務期間中に収支内訳などが挙げられます。なお、民法では、任務完了に伴う通知に関して、遅滞なく行わなければならないと義務付けています。