遺言執行者(遺言執行人)とは?役割や権限や資格等、わかりやすく解説

法的な効力がある遺言書は、円滑な相続とトラブルの回避に役立ちますが、遺言書の作成だけではスムーズに相続が進まないケースもあります。本記事では、遺言執行者の概要と必要性、具体的な業務内容、選任するメリット・デメリットを解説します。

遺言執行者(遺言執行人)の選任方法

近年、遺言書の作成とともに遺言執行者を選任するケースが増えています。相続のトラブルを避けるために重要な役割を担う執行者ですが、中には、相続人との間でトラブルに発展することもあるようです。遺言執行者を指定する際は、公平で正しい解釈ができるかどうかに加え、管理能力の有無も考慮したうえで選任することが大切です。

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遺言執行者(遺言執行人)になれる人

遺言執行者になるための資格や条件はありません。そのため、専門家ではない遺言者の家族や相続人でも就任できます。ただし民法によって、未成年者と破産者は遺言執行者になれないと定められています。

また、法的な知識のある弁護士・司法書士・行政書士・税理士などの専門家に依頼することや信託銀行などの機関に依頼する方法もあります。

未成年者や破産者でなければ誰でも就任できるものの、相続の手続きは複雑です。誰でも簡単に業務を遂行できるものではないため、トラブルを避け、スムーズに相続を進めたいと考えているのなら専門家への相談がおすすめです。

選任方法は3つ

遺言執行者の選任は、遺言書・第三者・家庭裁判所で指定するといった3つの方法があります。遺言書で特定の人物を指定する場合には、相続が発生した際に困惑させてしまわないよう、遺言書作成前に遺言執行者に選任する旨を事前に伝えておくようにしましょう。なお、遺言執行者は法人を指定することも可能です。

遺言書で遺言執行者を指定するのではなく、遺言書の中に遺言執行者を誰に決めてもらいたいか記載し、指定した第三者によって遺言執行者を選定してもらうという方法もあります。また、遺言書に遺言執行者の記載がとくにないケースや、指定した遺言執行者が就任を拒否したり亡くなったりした場合は、家庭裁判所に遺言執行者を選任するための申立てを行うことが可能です。

選任に必要なもの

家庭裁判所に選任の申立てを行うときは、以下の書類が必要です。

・申立書
・遺言者の死亡について記載してある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
・遺言書の写しもしくは遺言書の検認調書謄本の写し
・被相続人との利害関係を証明する文書
・遺言執行者候補者の住民票または戸籍附票

また、申立てを行う際の費用として、遺言書1通に対して800円分の収入印紙のほか、連絡用の郵便切手も用意しなければなりません。

報酬も支払う

相続人を遺言執行者に指定する際には、報酬を定めないケースもありますが、弁護士や司法書士などの専門家に依頼する場合は、報酬の支払いが生じます。依頼先によって報酬額は大きく変わるため、事前の確認は必須です。

なお、選任した相続人に報酬を支払いたいと希望する場合には、予め遺言執行者の報酬金額を遺言書に記載しておくとよいでしょう。遺言執行内容に応じて適切な報酬額を決定してもらいたい場合には、家庭裁判所で決めてもらうのもひとつの方法です。

辞任・解任することもできる

指定された遺言執行者は就任を拒否することができ、就任してから辞任をすることも可能です。しかし、就任後の辞任には正当な理由が求められ、病気や引っ越しなどを理由に客観的に継続が困難である場合に、家庭裁判所に申立てをして辞任の手続きを行えます。

また、遺言執行者を解任する際にも然るべき理由が必要です。例えば、遺言執行者として果たすべき任務を怠ったり、不正の疑いがあるなどの場合に家庭裁判所へ解任を請求することができます。他方で、個人的な感情や遺言書に対する不満を理由に解任を請求する行為は認められていません。

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遺言執行者(遺言執行人)を選任するメリット

遺言執行者を選任すれば、円滑に相続手続きを進められます。遺言執行者には、遺言内容の実現に向けて単独で手続きを進める権限が与えられるため、他の相続人の負担も軽減できるでしょう。また、相続人の不正や独断を抑制する効果も期待できます。

遺言者にとって、遺言内容をきちんと実行してくれるかどうかはとても重要です。遺言執行者を指定すれば、遺言者が望むとおりの相続を実現してくれます。少しでも不安に感じる要素があれば、費用がかかったとしても第三者である専門家を遺言執行者に指定した方が安心できるでしょう。