日本料理では味と見た目の美しさを追求するために「五味五色」を大切にしています。これにならい、私も1日に最低5色の食材を食べるように意識しています。酢漬けの魅力は、冷蔵庫に常備しておけば、華やかでおいしく、健康的な食事がすぐ用意できること。実際は冷蔵庫から出すだけの「手抜き」ですが、「自分はちゃんと正しく食べている」という自信が持てるのもうれしいですね。【解説】谷島せい子(料理研究家)

解説者のプロフィール

谷島せい子(たにしま・せいこ)

1947年生まれ。航空会社の客室乗務員や映画会社の海外ロケコーディネーター兼通訳として勤務後、結婚し男児2名の母に。育児の傍らフランス料理の一流シェフの指導を受け、1975年より自宅で料理サロンをスタート。1995年より、料理教室「スタジオMOW」主宰。テレビや雑誌などのメディアに多数出演する他、料理店のメニュー作りや食品会社のアドバイザーなども幅広く行っている。『50歳からもっと素敵に、もっと楽しく』(海竜社)、『季節をたのしむ ジャムと果実酒』(成美堂出版)など、著書多数。

(広告の後にも続きます)

カラフルな酢漬けが気持ちを華やかにする

私は今年で75歳になります。今はマンションで1人暮らしをしており、家族と暮らしていた頃と比べて、食習慣はだいぶ変わりました。

朝食は白湯に始まり、トマトジュースやエスプレッソ、食パン2枚、フルーツ、ヨーグルトをいただきます。おなかの具合によっては、さらに卵とベーコンを食べることもあります。

昼食は、カツ丼などの好きなものを。その分、夕食は野菜中心のあっさりとしたメニューにしています。

コロナ禍以降、この食習慣を続けていますが、私の体にはこれが合っているようです。お昼をしっかりと食べるからか、午後の犬の散歩では、足の運びが軽やかに感じます。また、夕食では油物が少ないので、洗い物の負担も減ります。

こんな自由な食事は、家族と暮らしていた当時は難しかったでしょう。これも「おひとりさま暮らし」の魅力ですね。

「野菜の酢漬け」は、そんな私の食卓の彩りになっています。

野菜の栄養を損なわずにおいしくいただくには、新鮮なうちに食べ切るのが一番です。しかし、1人暮らしではそれが難しいこともあります。

新鮮なうちにぬか漬けやみそ漬けなどにすれば、野菜は無駄にはなりません。しかし、漬物にすると、色がくすんでしまうのが難点。漬物はおいしくて大好きなのですが、この点だけは気に入りません。

特に私は、生活の中の「色」にこだわっています。ファッションでは、赤いネックレスや緑のベルトで差し色を入れるのが大好き。華やかな色を身に着けると気持ちが華やぐからです。

食べ物も一緒で、彩り豊かな食卓にすることを心がけています。さまざまな色の食材を使った献立は、気持ちが華やぐだけでなく、栄養を偏りなくとれるような気がするのです。

実際、日本料理では味と見た目の美しさを追求するために「五味五色」を大切にしています。これにならい、私も1日に最低5色の食材を食べるように意識しています。

私の場合、食材は5色にキッチリ分けず、できるだけ異なる色を食べるようにしています。

茶色は肉、緑はベランダで収穫するバジルや青ジソ、白は大好きな大根やカブを千切りにしたサラダで、比較的簡単にとれています。

一方で、食事に取り入れづらいのが赤やオレンジ。ミニトマトやパプリカなどが当てはまりますが、長期保存が難しく、1人暮らしでは持て余しがちな食材です。

しかし、これらを酢漬けにすれば、酢酸のおかげで1ヵ月はきれいな色合いが楽しめます。

肉料理にカラフルな酢漬けを添えるだけで、ちょっぴり豊かな気持ちになりますし、赤いパプリカの酢漬けを混ぜたタルタルソースを使えば、目にも楽しい一品が出来上がります。