日本の中小企業が抱える問題


町工場
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次に、中小企業について考えてみます。日本の中小企業は全企業数の99%を占めており、全従業員の約70%が中小企業に雇用されています。この中小企業の大半は「株主=経営者」のオーナー社長が経営しているため、上場企業の場合とは状況が大きく異なります。

では、中小企業では何が収益性を低下させているのでしょうか?

高齢化する経営者

中小企業の経営者は、年を追うごとに高齢化しています。下図をご覧ください。

 


引用元:中小企業庁作成「令和3年(2021年度)の中小企業の動向」P92より一部抜粋

中小企業経営者の年齢分布のピークがこの20年間で20歳近く高齢化し、何と現在は70代前半になっています。このおもな理由は、後継者の不在によるものです。

では、事業承継を行わず経営者が高齢化したら、一体何が問題なのでしょうか?

経営者の保守化と収益性の低下

経営者の年齢が高齢化すればするほど、新しい分野にチャレンジする試行錯誤が行われにくくなることがデータとして表れています。

 


引用元:中小企業庁作成「令和3年(2021年度)の中小企業の動向」P94より一部抜粋

高齢化によって保守化していくことは、何も経営者だけに限ったことではありません。問題は、事業承継を行わないまま高齢化し、保守化した経営者の企業がどうなるかです。

下図をご覧ください。

 


引用元:中小企業庁作成「事業承継ガイドライン」P13より一部抜粋

事業承継を行わず経営者が高齢化した企業と、事業承継によって経営者が交代した企業を比較すると、経常利益率に1.6倍近くもの開きがあります。中小企業の収益性が大企業と比べて低いのは、これがすべてではありませんが、大きな要因の一つであることは間違いありません。

中小企業の事業承継は従業員の雇用を守り地域経済を支えるために必要不可欠ですが、そこで働く従業員の給料を上げるためにも、適切な時期に行われることが必要であると考えます。

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終わりに

日本企業で働く私たちの給料が上がらないのは、私たちの働き方が悪いわけでも、企業や経営者が悪いわけでもありません。複数の要素が複雑に絡み合い、結果として給料が上がりにくい状況を作り出しているためです。

この状況を打開する方法を見つけ出すことは簡単ではありませんが、まずは国が給料を上げた企業に対して何らかのインセンティブを与え続けることが大切なのではないかと思います。