追納分を投資に回した場合との比較


貯金の比較
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では、追納をせずに投資をして増やしたらどうなるか比較してみましょう。受取開始の65歳時には、いくらになっているでしょうか。

実質の追納相当額となる47万7800円を30歳から65歳まで年利3%で運用したとします。その場合、65歳時点で投資額は、134万4400円に増えます。(1年複利)

その後は、仮に2%で運用しながら、65歳から90歳まで少しずつ取り崩すとした場合、6万8200円ずつ取り崩すことができます。前述の年間5万8200円より多い金額となり投資の方が有利です。

ただ、人生100年ともっと長期で考えて、65歳から100歳までの35年間で取り崩すのなら、年間5万3200円弱が取り崩せる金額となるため、追納した方が有利ということになります。

何%で運用したいのかという目標設定と商品選び、実際の運用結果によって優劣は変わってきます。なお、ここでは税金を考慮していません。実際は、数十年先の税制が関係してきます。

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結局追納すべき?それとも投資に回す方がいい?


老後資金を育てる
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結局、投資は、運用次第でいくらでも有利になり得るといえるでしょう。今回のシミュレーションは、極端にリスクをとった試算ではないので物足りなく感じると思います。でも、もっとリスクをとって高いリターンを目指すなら、投資が断然有利です。しかし、そう決めつけるのも何だか違う気がします。

先々の年金制度は、少子高齢化の影響で目減りする可能性も否めません。しかし、公的年金は、年金保険料を納めてさえいれば生涯もらえるという安心感はあります。

令和2年厚生労働白書によると、日本人の平均寿命は、2040年に男性83.27歳、女性89.63歳となり、男性の4割は90歳まで、女性の2割が100歳まで生きると推計されており、寿命は今後も延びていきます。

また、年金は75歳まで繰り下げて受け取ることも可能です。1年繰り下げると8.4%年金が増えるため、仮に75歳まで繰り下げるなら年金は84%増加することになります。もちろん寿命によって損得があり、また年金が増えると税金や社会保険料の負担が増えるなどの別の議論も必要です。

一方で、将来的に年金制度が変更され、欧米のように受け取り開始年齢が引き上げられる可能性もあります。つまり、どちらが有利かは少なくとも自分が年金をもらう時期を迎えなければ分かりません。ただ、公的年金は国の制度ですので、急に見直しが決まってすぐ実行されるわけではありません。

もともと厚生年金は、60歳から受け取れるものでしたが、65歳受給開始が決まり、20年程かけて徐々に引き上げのスケジュールを歩んでいるところです。仮に今後、受給開始年齢が更に引き上げになることがあっても、時間をかけてじっくり変更されていくことが想定されます。

「公的年金と投資は似て非なるものとして、公的年金は基本的に納める。同時に資産運用も必要な時代なので、別の資金でコツコツやっていく。」というスタイルが良いのではというのが筆者の見解です。

「基本的」に納める、としたのは、その方の性分や投資・資産管理に関する考え方、そして家計の状況や将来のライフイベントなどによってベストな選択肢が違うからです。公的年金と投資との違い、特徴をとらえながら総合的な視点で検討してみましょう。

なお今回は、多くの方が利用している学生納付特例制度という猶予制度についてシミュレーションしました。しかし、免除制度の場合、国が年金を半分補てんしてくれるため、その結果は異なります。

また、免除や猶予ではなく、滞納をして資産運用を優先させることはお勧めしません。理由は、年金納付が国民の義務だからということだけではなく、公的年金は保険制度として、いざという時の遺族年金や障害年金になり生活を支えてくれるからです。滞納を続けると、いざという時に納付要件を満たせずセーフティーネットの恩恵を受けられなくなります。