無理なストレッチや筋トレはNG!



――ストレッチや運動をすれば、硬くなった背中をほぐすことができるのでしょうか?

犬飼さん 筋トレやストレッチを頑張ることは、健康に良いとされています。でも実は、「頑張ること」をしてしまうと、健康が遠のいてしまうんです。

――それはどのような意味でしょうか?

犬飼さん 筋肉には、力を入れているときに硬くなり、力を抜いたときにやわらかくなるという性質があります。例えば、次のようなことに思い当たることはないでしょうか?

・胸を張って歩く
・下腹に力を入れておなかを引っ込める
・おしりに力を入れて立つ
・ストレッチで思い切り筋を伸ばす
・長時間、パソコンの前で肩を上げたまま作業をする
・気が付くと歯を食いしばっている
・やらなければならないことを常に考えている

筋肉は力を入れているときに硬くなりますから、こうした動作や習慣を日常的におこなっていると筋肉が硬くなってしまうんです。

それに、人間にとって力を入れ続けることは自然な状態ではないんです。私はウォーキングインストラクターとしてこれまでに約6000人の方に歩き方や姿勢の指導をおこなってきましたが、体に力を込めることによって知らず知らずのうちに余計な負荷がかかり、不調を訴えている人は少なくないんです。

――ということは、頑張ってストレッチや運動をしないほうが良いということでしょうか?

犬飼さん ストレッチに関していえば、体が心地よく伸びるようなストレッチは筋肉をゆるめるのに有効です。ただし、痛みを我慢して筋を伸ばすようなストレッチをしている場合は、今すぐやめていただきたいですね。

――それはなぜでしょうか?

犬飼さん 筋肉が硬い人ほど、無理に伸ばすとさらに硬くなってしまうんです。体が硬いのは、柔軟性が低下してこわばった筋肉が関節の動きを制限してしまうから。体をやわらかくするには、硬くなった筋肉をゆるめて、関節の可動域を広げることが大切なんです。

――筋トレのような運動もしないほうがいいのでしょうか?

犬飼さん 実は頑張って筋トレをしても、ご自身が思っているほど筋肉が動いていないという人は多いんです。なぜかというと、筋肉をゆるめていないからです。

筋肉が硬い状態で筋トレを頑張っても、筋肉の収縮性がなく可動域も狭まっているため、思うように伸縮しないんです。場合によっては、筋を痛めてしまうこともあります。ストレッチや筋トレに取り組むよりも、まずは背中の緊張を取ることが健康への近道です。

例えば、「両腕ひねり」という動きで背中をゆるめることができます。

【両腕ひねりの方法】
1. 右腕を肩の高さまで上げます。
2. 肩の付け根から、内側、外側の順にひねります。これを3回繰り返します。
3. 左腕を肩の高さまで上げ、内側、外側に3回ひねります。
4. 両腕を肩の高さまで上げ、同じように内側、外側に3回ひねります。

いつでもどこでも気付いたときにおこなえるのでおすすめです。ぜひ日常生活の中で取り入れてほしいですね。

※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。

<著書>



『背中をゆるめると健康になる』犬飼奈穂/著 プレジデント社 1540円

取材・文/熊谷あづさ(50歳)
ライター。1971年宮城県生まれ。埼玉大学教育学部卒業後、会社員を経てライターに転身。週刊誌や月刊誌、健康誌を中心に医療・健康、食、本、人物インタビューなどの取材・執筆を手がける。著書に『ニャン生訓』(集英社インターナショナル)。

著者/犬飼奈穂さん/ウォーキングインストラクター
「しんどい」を「楽しい」に変える歩き方コーチ。「ORO(オーロ)ウォーキングスタジオ」代表。「オーラをまとう歩き方レッスン」主宰。愛媛県松山市出身。あらゆる動作の基本となる日常の姿勢と歩き方の大切さを痛感し、自身の経験に理学療法士から学び得た知識を加えて歩き方の独自メソッドを確立。「正しい歩き方」ではなく、「心地よい歩き方」を探求し、余計な力を入れず、良いバランスで立ち、背中で歩くことを指導している。これまでに述べ6,000人以上に指導し、肩凝り・腰痛、猫背、坐骨神経痛など、体が抱える数々の悩みを改善してきた。現在は、パーソナルレッスンを中心に、国内外を問わずオンラインレッスンやセミナー講師としても活動中。ゆずの大ファンで、趣味は、ギターの弾き語り。