親の認知症に備える財産管理方法!メリット・デメリットを徹底比較!

家族が認知症になってしまったとき、その財産をどのように管理すればいいのか不安な人も多いのではないでしょうか。本記事では、「法定後見制度」「任意後見制度」「家族信託」「財産管理委任契約」の紹介を通して、認知症に備えた財産管理方法を解説します。

財産の活用の自由度が高い家族信託

財産管理という点では、家族信託も選択肢の一つです。民事信託ともいわれ、家族以外の信頼できる人に財産管理を任せることもできます。
本人の判断能力が低下する前から、財産の管理を任せることができる点も特徴の一つです。

家族信託のメリット

家族信託のメリットは、財産の管理や運用に関する信託内容を自由に決められることです。財産の承継の仕方を指定したり、不動産相続をスムーズにしたりすることもできるので、認知症対策だけでなく、相続対策としても効果的といえるでしょう。

家族信託のデメリット

家族信託のデメリットは、家族に託せる内容が財産管理に関する事項のみに限られることです。受託者が本人に代わって介護施設への入居契約などの療養看護にかかわる法律行為を代行する権利は認められていません。したがって、財産管理以外にも代理権を与えたい場合は、法定後見制度や任意後見制度との併用が必要です。

家族信託利用の流れ

家族信託の利用の流れは以下の通りです。

1.受託者・受益者・信託契約の内容を決定する
2.信託契約書を作成・締結する
3.財産の名義を受託者に移す(不動産の名義変更なども含む)
4.信託による財産管理の開始

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認知症の場合には利用しにくい財産管理委任契約

財産管理委任契約とは、身体的な不自由がある場合などに、私的な契約において、支払いの代行などを第三者に委任するものです。本人の判断能力があるうちに第三者に財産管理を託すという点で、財産管理委任契約は任意後見制度と一見似ています。

しかし、財産管理委任契約では判断能力の低下の有無に問わず受託者による財産管理が開始しますが、任意後見制度では判断能力低下後、監督人が選任されてから財産管理が始まる点が異なります。加えて、財産管理委任契約には家庭裁判所による監督がなく、監督の有無による違いもあります。

これらの違いから、財産管理委任契約は任意後見制度と比べ、認知症対策としてはあまり適していません。その理由は、財産管理委任契約の以下の特性によります。

財産管理委任契約のメリット

財産管理委任契約のメリットは、任意後見制度のように法律に準拠せずに委任内容を自由に決定することができる点です。私文書による契約でよいので煩雑な手続きも不要です。

また、任意後見制度と異なり本人の判断能力が低下する前から財産の管理を行うことができます。制度の開始にあたって家庭裁判所への申し立ても不要なので、契約後すぐに利用することができるのもメリットでしょう。

財産管理委任契約のデメリット

上記のようなメリットは、財産管理委任契約には法的な後ろ盾が乏しいということの裏返しでもあります。財産管理委任契約に対応していない金融機関もあり、受任者が何らかの手続きを代行しようとしてもその権利が認められない場合や、本人自身の意思確認を求められる場合があるのです。

したがって、財産管理委任契約は認知症対策としては不安が残ることになります。

また、財産管理委任契約においては、財産を管理する受任者を監督する人がいません。そのため、委任者である財産所有者が認知症になり判断能力が低下した際、受任者の財産管理を適切に監督することができません。このような場合に備えて、任意後見制度も併用するとよいでしょう。

財産管理委任契約の利用の流れ

財産管理委任契約の利用の流れは以下の通りです。

1.受任者・委任内容を決定する
2.委任契約書を作成・締結する
3.財産管理の開始

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