土地の相続税評価額を80%減額できる「小規模宅地等の特例」とは?

土地を相続する際、相続税の負担を最大80%減らすことができる特例として「小規模宅地等の特例」があります。今回は、特例の内容や適用条件について丁寧に解説します。土地の種類や用途によって例外もあるので、具体例を参考にしてみてください。

小規模宅地等の特例に必要な書類

小規模宅地等の特例を適用する土地は、相続人間の合意により申告期限までに遺産分割されていることが前提になります。仮に遺産分割が申告期限に間に合わなかったとしても、期限から3年以内にでき、申請を行えば特例が使えます。
特例の適用を申請する際に必要な書類は、相続人が故人と同居していたか、別居していたかによっても変わってきます。
配偶者や同居していた親族が相続する場合は、通常の相続税申告に必要な以下の書類だけでOKです。

■相続税申告に必要な書類

①故人のすべての相続人を明らかにする戸籍謄本
※相続開始の日から10日を経過した日以降に作成されたもの

②図形式の法定相続情報一覧図の写し
※子の続柄が実子または養子のいずれであるかが分かるように記載されたもの、養子がいる場合は養子の戸籍謄本または戸籍抄本も必要

③①または②のコピー

④遺言書または遺産分割協議書の写し
※遺言書がなく遺産分割協議が終了していない場合は、「申告期限後3年以内の遺産分割協議の分割見込書」

⑤相続人全員の印鑑証明書
※遺産分割協議書に押印したもの

⑥申告者のマイナンバーを確認できる書類
※マイナンバーカードの写しなど

前述の「家なき子要件」の該当者は上記の書類に加えて、「相続開始前から3年以内に自分や配偶者、3親等以内の親族などの持ち家に住んでいないこと」を証明する次のような書類も必要です。

■「家なき子要件の該当者」に必要な追加書類

⑦戸籍の付票の写し
※相続開始日以降に作成されたもの

⑧相続する家屋の登記簿謄本、借家の賃貸借契約書など

また、後述する故人が老人ホームに入っていたケースでは、故人が要介護や要支援の認定を受けている(もしくは申請中)、法律で定められた施設に入居していたことを示す次のような書類も必要になります。

■故人が老人ホーム等に入っていた場合に必要な追加書類

⑨故人の戸籍の附票の写し
※相続開始の日以降に作成されたもの

⑩介護保険の被保険者証、障害福祉サービス受給者証、要介護認定証、要支援認定証などの写し

⑪施設入所時の契約書の写し

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小規模宅地等の特例、こんな場合はどうなるの?

特例が適用される土地や相続人についてひと通り説明してきましたが、中には、特例が使えるのかどうか、迷うこともあるでしょう。ここからは、判断に迷う代表的なケースを紹介します。

故人が老人ホームに入っていた場合

ひとり暮らしの親が要介護状態となり、老人ホームに入居してそのまま亡くなったとします。空き家となっていた実家を相続する際も、条件を満たせば小規模宅地等の特例が使えます。
対象となるのは、故人が要介護または要支援の認定を受けているか申請中で、法律で定めた施設(要介護認定は養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、サービス付き高齢者向け住宅など、要支援認定は障害者支援施設、共同生活援助を行う住居など)に入居していた場合です。
また、その際は親が施設に入居した後に実家が賃貸に出されたり、事業に使われたりしていないことが条件となります。

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マンションの場合

分譲マンションを相続した場合も、土地の部分には小規模宅地等の特例が使えます。分譲マンションの区分所有者には、マンションの土地の「敷地利用権」があります。敷地利用権のうち登記されているのが「敷地権」で、この敷地権の持ち分割合(マンション全体の土地の中でどれだけを所有しているかを示す)の相続税評価額に対して特例が適用されます。

2世帯住宅の場合

故人と2世帯住宅で暮らしていた親族が相続する場合、原則として小規模宅地等の特例の適用が可能ですが、登記の形態などによっては特例が使えなくなることもあるので、注意が必要です。
2世帯住宅は、1階が親、2階が子というように分かれていて建物の中を自由に行き来できる「非分離型」と、玄関や居室が完全に別となり建物内を自由に行き来できない「完全分離型」とに大別されます。いずれの場合でも、原則的には330平方メートルまでのすべての土地に対して特例が適用できます。
例外は、2世帯住宅で居住する部分のそれぞれに別の登記(区分所有登記)がされている場合です。区分登記された住宅だと、故人名義で登記された部分には故人のみが居住していたと見なされ、「同居の親族」という条件を満たさなくなるためです。
ただし、既に区分所有登記をしている方でも、親が存命中に名義を変更しておけば、相続の際は特例を使うことができます。

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