24歳サバ読み「架空の妹」になりすました73歳女…「年齢を気にせず働きたいと思った」裁判で語られた犯行動機

“24歳年下の妹”の戸籍を作り、保険証などをだまし取ったとして、詐欺と有印私文書偽造・同行使などの罪に問われた吉野千鶴被告(73)の審理が25日、東京地裁で行われた。

吉野被告は昨年10月、48歳の「岩田樹亜」として手に入れた住民票とマイナンバーカードを持ち、原付免許を取得しようと鮫洲運転免許試験場に現れたところを逮捕されており、これまでの取り調べや公判でなりすましを認めている。

“若さ”感じさせる黒いブーツ、肩をもむ姿も


履いていた黒のフリンジブーツと、肩や腕をもむ姿が目立った(画:Minami)

25日の審理では、吉野被告は黒色系のマスク姿に灰色の上着を着用し登場。“若さ”を感じさせる、黒いフリンジブーツが印象的で、開廷時間の14時30分が近づくにつれて腕や左肩をもむ姿が見受けられるようになった。

裁判官から起訴内容について間違いがないか聞かれた吉野被告は、首を横に振る姿を見せたが、裁判官から声に出すよう指示されると、体を左右に揺らしながら「ありません」と答えた。

なりすました“架空の妹”の名前に反応示す場面も

この日、検察官は提出した証拠書類について説明。吉野被告の夫(逮捕の後、不起訴)による供述調書や、吉野被告自身の供述調書は、その一部が読み上げられた。

読み上げられた夫の供述調書からは、妻が24歳年下の架空の人物になりすましていく過程が明らかになった。

夫は「架空の妹を作る」という吉野被告の思い付きを聞かされ、当初は「誰が信じるんだ」と気にもしていなかったというが、戸籍を作成する過程で弁護士に相談したり、家裁職員と面接したりするなど次第に話が進んでいき「戸籍取れるんちゃうか」と思うようになったという。

また吉野被告の供述調書からは、犯行動機について「会社で年齢差別を受けたり、悪口・うわさ話をされたりした。若返りたいとかではなく、好きな仕事を長く気分良く続けたい、年齢を気にせず働きたいと思った」と語っていたことが読み上げられた。

この間、吉野被告は体を正面に向けてはいるものの、肩や腕などを手でもんだり、手や爪を気にしたりするしぐさを頻繁に見せていたが、時折「岩田樹亜」の名前に反応する場面もあった。

最後に、次回期日についての話し合いが検察官と裁判官、弁護士の間で行われると吉野被告は指を折り何かを数えていた。

検察側は追起訴を予定しており、次回期日は5月8日に開かれる。吉野被告は裁判官から日程を言い渡されると、小さなメモ帳にペンを走らせ、小さく頭を下げた。

弁護側の主張や、吉野被告が事件について今何を思っているのかについては、次回以降の期日で明らかになるだろう。