なぜ「有罪」でも選挙に出ることができる? “獄中”立候補も可能な「法の仕組み」と「出馬」の狙いとは

カジノを含む統合型リゾート(IR)事業をめぐり、収賄と組織犯罪処罰法違反(証人買収)の罪に問われた元衆院議員・秋元司被告の控訴審判決が3月22日、東京高裁で行われ、一審を支持し、控訴を棄却した。秋元氏は判決内容によらず、4月の衆議院東京15区(東京都江東区)補選への出馬を表明していたが、即日上告し、”有罪”のまま選挙戦にのぞむことになった。そもそもなぜ、有罪判決を受けても出馬は可能なのか、一体なんのために出馬するのか…。

約1時間に及んだ判決理由は、秋元被告の無罪主張を改めて跳ねのけ、全面的に1審を支持する内容だった。想定内の結果だったのかは定かでない。だが、元議員側は不服として即日上告することで改めて”潔白”を意思表示した。

秋元元議員はその後、「国策捜査だ」と憤り、出馬することで国民に信を問う覚悟を示したという。その週末には地元江東区で車を走らせ、区民にも存在をアピールした。だが、こうした動きに、X上では「公職選挙法違反じゃないのか」との指摘もあがっていた。

実は実刑判決を受けて出馬した政治家は、過去に田中角栄、鈴木宗男らがおり、いずれも当選している。一般の感覚では”有罪”で選挙にでられることには違和感がある。そもそも”有罪”で選挙に出られることは、法的にどう説明できるというのか。

”有罪”でも選挙に出れる理由を弁護士が解説

政治家のトラブルに詳しい三葛敦志弁護士が解説する。

「有罪判決が出ても刑の確定までは推定無罪で選挙に出ることは可能です。秋元氏は保釈されていますが、獄中立候補という形で出馬した政治家も過去にはいます」

判決を不服として、法廷闘争を続けている間は、”有罪”でも出馬は可能という。そうだとしても、裁判官が有罪とした状況で、あえて国民の審判を仰ぐ選挙戦にのぞむ理由はなんなのだろうか。


刑が確定するまでは闘う権利があるという(東京江東区で/弁護士JP編集部)

「まずは刑が確定するまでは政治家としてファイティングポーズをとり続けるためなのでしょう。当然、本人は無罪だと信じているわけですから。国家権力に負けないんだというスタンスも選挙戦を戦う意義になってくるでしょうね」(三葛弁護士)

とはいえ、有権者にとっては、”有罪”の政治家に票を投じるに値する材料は乏しいのが実状だろう。三葛弁護士は、その点について「過去に有罪判決を受けながら後に復活した政治家もいます。そうした人は強い支持基盤はもちろん、やはり、人間性の部分で多くの支持者の票を獲得しているようです」と見解を述べた。

選挙の結果で動きがある可能性も指摘

その上で三葛弁護士は、選挙の結果を受け、秋元氏が法廷闘争で動く可能性を指摘した。「仮に選挙で負ければ、上告を取り下げる可能性はあるでしょうね。早めに刑を確定させる。そうなると自動的に公民権停止になり、早めに復権できます」

公民権は国または地方公共団体の公務に参与する権利のこと。これが停止されると選挙における立候補ができなくなる。それゆえ、政治家にとっては「死刑宣告」ともいわれている。あえて、その選択をする意味はなんなのか。三葛弁護士が補足する。

「公民権が停止される期間は5年間。裁判を闘い続け、もしも結果が芳しくなかった場合を考えると、選挙活動を再開できる時期がそれだけずれ込んでしまう。ならば少しでも早い段階で停止になっておいた方がいいという判断もありえます。ただ、ファイティングポーズとは矛盾するため、陣営としても悩ましい判断になります」

身の潔白に自信があるからこその有罪出馬。秋元氏出馬の選挙区の有権者は、いつも以上に厳しい姿勢で、投票にのぞむことになりそうだ。注目の衆院東京15区(東京都江東区)補選は4月28日に投票日を迎える。