がんの治療費用の平均はいくら?自己負担額も含めて解説します!

厚生労働省の「令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、40代以降の日本人の死因割合は悪性新生物(がん)が上位を占めています。

20〜30代の若い世代においても、がんで死亡する人の割合は高く、長い人生を健康的に過ごすためには、がんのリスクに対する備えが重要といえます。

そこで気になるのが、「がん治療には一体いくらの費用がかかるのか」という点です。

この記事では、国の統計データを用いながら、がん治療費用の平均額や自己負担額について解説していきます。

がん治療費用の平均金額と入院日数

厚生労働省の「令和2年(2020)患者調査の概況」によると、がん患者の平均入院日数は約18.2日となっています。

また、厚生労働省が公開する「医療給付実態調査」における結果の概要を参照すると、令和2年度の部位別がん治療の平均費用は、次のとおりであることがわかっています。

※点数÷件数で計算された結果の小数点第一位を四捨五入した数値をまとめています
※公的医療保険制度が適用された後のがん患者の自己負担分の平均額です参照:令和2年度医療給付実態調査(表番号5 統計表第3表)|厚生労働省

年齢に応じて自己負担分は1〜3割の間で変動しますが、入院によるがん治療は高額な費用がかかることが多いです。

一方、「令和2年(2020)患者調査の概況」の推計患者数によれば、令和2年度のがん患者の入院患者数は12万6千人、通院患者は24万7千人で、近年のがん治療は通院治療が主流になってきていることが伺えます。

これらのことから、入院によるがん治療の医療費は入院日数に応じて高額になります。

ですが、近年では通院治療が主流なため、がん治療の費用も相対的に下がっている状況にあるといえます。

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公的医療保険を利用してがん治療費の自己負担を減らす

日本では公的医療保険制度が充実しており、医療費の1〜3割を自己負担分として支払えば、誰もが高度な医療を受けられます。

しかし、治療方法や治療期間によっては高額な医療費を自己負担で賄わなければならない場合もあるので、治療費負担を減らすための公的保障制度についても知っておきましょう。

がんの治療費負担を減らすための公的制度

高額療養費制度

高額療養費貸付制度

医療費控除

介護保険制度

障害年金・障害手当金

高額療養費制度

高額療養費制度は、公的医療保険制度を利用して支払った自己負担分が、年齢や所得区分で決められた上限額を超えた場合に、超過した分の金額が払い戻される制度です。

所得区分ごとの上限額は、次のとおりです。

参照:高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)シート5|厚生労働省保険局

なお、上記は69歳以下の方が対象の高額療養費制度の上限額で、年齢が70歳以上の方は別の上限額が定められています。

同じ世帯で直近12ヶ月以内に高額療養費の支給を受けた月が3ヶ月以上ある場合は、4ヶ月目から多数回該当として、さらに自己負担分が軽減される仕組みもあります。

ただし、高額療養費制度では「差額ベッド代」や「自由診療」で治療をした場合の医療費は対象とならず、全額自己負担となります。

また、先進医療を受ける場合、一般の治療の費用は公的保険制度の対象となるため自己負担が軽減されますが、先進医療の技術料は高額になるため、自己負担の金額は高くなる可能性があります。

高額療養費制度はいくらから適用?申請方法や計算方法をわかりやすく解説

高額医療費貸付制度

高額医療費貸付制度は、高額療養費として支給される見込み金額の8割相当額を無利子で借りられる制度です。

上述の高額療養費制度は、簡単にいうと一度支払った分の金額が上限を超えていた場合に、後から払い戻しが受けられる制度です。

一度は高額な医療費を自身で建て替えなければならないため、高額化しやすいがん治療の費用が、家計を圧迫する大きな原因となってしまいます。

そのような場合に、高額療養費貸付制度を利用すれば支給額の大部分を前借りできるため、家計の負担を軽減したうえで高額ながん治療の費用を支払うことが可能となります。

ただし、加入している公的医療保険(国民健康保険、健康保険など)によって、高額医療費貸付制度で実際に借りられる金額が異なる点には注意が必要です。

医療費控除

医療費控除とは、一年間のうちに支払った医療費の合計が一定金額を超えた場合、確定申告でその金額を申請すると所得控除が受けられる制度です。

一般的に、一年間のうちの医療費が10万円を超えた場合は、たとえ会社員であっても自分で確定申告をして、医療費控除を申告したほうが良いとされています。

確定申告で医療費控除を申告すると税負担が軽減されるので、がん治療の費用として支払った医療費が高額になった人は、忘れずに医療費控除の申請を行いましょう。

確定申告の医療費控除はいくらから?申告方法や還付金の計算方法、対象項目などを解説

介護保険制度

介護保険制度は、市区町村の認定を受けた要介護者や、特定疾病により介護認定された人を対象とした公的な保険制度です。

介護保険法に基づく介護サービスを自己負担1〜3割で受けられるようになるので、要介護状態となってしまった場合の費用負担を軽減する効果が期待できます。

なお、介護保険制度を利用できるのは、65歳以上の第1号被保険者と、40〜65歳未満の公的介護保険加入者で特定疾病により介護認定を受けた人に限られます。

また、直接的にがん治療の費用をカバーできる制度ではないため、その点には注意が必要です。

介護保険とは?制度の仕組みとサービス内容、申請方法をわかりやすく解説します

障害年金・障害手当金

障害年金とは、病気やケガなどが原因で生活や仕事などが制限されるようになった場合に年金が受け取れる制度のことです。

悪性新生物(がん)の症状によっては、障害年金の支給対象となります。

国民年金や厚生年金の加入者は支給対象となっているため、がんの治療で生活が困難になっている場合は障害年金を受け取ることができる可能性があります。

なお、障害状態の程度によって1〜2級(障害厚生年金は1〜3級)に分けられており、その区分に応じた金額が障害年金として支給されます。

厚生年金の加入者で障害状態が軽度と認められた場合は、年金形式ではなく一時金として「障害手当金」を受け取ることができるので覚えておきましょう。

障害年金とは?対象者や障害等級の受給要件、手続きをわかりやすく解説