年収700万円の48歳男性、絶句…「資産家の父」急逝で“実家消滅の危機”に陥ったワケ

すぐに引越しできないなら「リースバック」という手も

筆者はこの話を受け、「では、住宅ローンの返済機関に事情を話し、了解を得てからマンションを売却するか、あるいは『リースバックする』という方法がありますよ」とお伝えしました。

事前に地元の不動産業者にお聞きした話では、Hさんが住む都内のマンションは最寄駅から都心まで15分ほどと交通の便がよく、また子育てにも適した立地にあるそうです。また、中古マンション価格は現状上昇傾向にあり、ローンの残債や部屋のリノベーション費用を含めてもそれ以上の価格で売却できそうです。

リースバックとは、自宅などの資産を不動産会社などに売却して、売却後は売却先と賃貸借契約を結んで家賃を払い、売却した物件に住むことです。リースバックをすればマンションの所有権はなくなるため、3年後には上記の「特定居住用宅地等」の特例適用が可能になります。さらに、リースバックであれば退去時の部屋のリノベーションも不要です。

ただし、売却を選ぶ際は代金が住宅ローンの残債より低額にならない売却先を見つけることが重要ですし、リースバックの場合は毎月の家賃が住宅ローン返済額より高額にならないようにすることが大切です。

まとめ…父の思いが伝わってきたHさん

筆者と税理士Bからの提案を受けて、Hさんは「実家を手放さなくてもいい方法を教えてもらい、すごく安心できました。妻と子どもたち、それから母・妹ともよく話し合い、ベストな方法を選びたいです」と話してくださいました。

「余談ですが……、子を持つ親になって、どうしてあれだけ父が頑固だったのか、少しわかってきたかもしれません」と微笑みました。

<参考・注釈>

※1 詳細は国税庁HP「No.4158 配偶者の税額の軽減」を参照のこと。

※2 相続時精算課税制度の詳細と、暦年課税と相続時精算課税制度の比較などについては、生命保険文化センターHP『「相続時精算課税制度」とはどんな制度?』を参照のこと。

※3 「小規模宅地等の特例」の詳細については、国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」を参照のこと。